シリコンナノワイヤ中の不純物の挙動捕らえることに成功
:物質・材料研究機構/筑波大学/科学技術振興機構

 (独)物質・材料研究機構と筑波大学、(独)科学技術振興機構は2月4日、次世代半導体材料として注目されるシリコンナノワイヤに、トランジスタ化に必要な2種類の不純物元素をドーピング(注入)し、不純物元素の状態と挙動を非破壊・非接触で捉えることに成功したと発表した。ドーピングの評価と機能制御に道を開く成果で、ナノスケールの次世代トランジスタ回路素子や高効率太陽電池などの開発を加速できるとしている。
 シリコンナノワイヤは、直径がnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)大のシリコン製の細線。これを用いるとデバイス占有面積が従来の平面型トランジスタの数十分の一の縦型立体構造トランジスタを作れる可能性があり、現行のLSI(大規模集積回路)を凌ぐ低消費電力・高速・高集積の回路素子開発が期待されている。
 その実現に欠かせない重要課題の一つが、トランジスタ化のためにドーピングする不純物元素の状態、挙動の把握。研究チームは、ラマン分光法と電子スピン共鳴法と呼ばれる2つの手法を用いた非破壊・非接触観察法を確立し、今回不純物元素としてドーピングしたボロン(ホウ素)とリンのナノワイヤ(直径20nm)中における化学結合状態と電気的活性度の両方を同時に捉えることに成功した。
 観察によると、ボロンは絶縁膜である表面酸化膜側に偏析しやすく、リンはシリコン側に留まりやすいこと、また、ナノワイヤに応力をかけることでボロンの酸化膜側への偏析を抑えられることがつかめたという。
 今回確立した手法は、将来の超高密度3次元素子の開発に重要な役割を果たすだけでなく、p型・n型接合の制御が重要な高効率太陽電池の開発などにも役立つとしている。

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