極微の現象「量子もつれ」を操る理論を確立
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は1月19日、量子コンピューターなどを可能にする極微の世界の現象「量子もつれ」を、電子を用いて実現し実験的に操作できるようにする理論を確立したと発表した。
 量子もつれは、光では検証されているが、電子ではまだ。今回の成果により、最先端のナノテクノロジーを駆使すれば、光より高速計算などに適した電子で量子もつれの操作が可能になるとして、同機構は超高速の量子計算や大容量の情報通信を可能にする「量子テレポーテーション手法」などの確立につながると期待している。
 理論を確立したのは、同機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の王志リサーチアソシエート、古月暁主任研究者らの研究チーム。
 量子もつれは、光や電子などを支配する量子力学の根幹にかかわる現象のひとつ。量子力学では、光や電子などの動きを量子状態と呼ぶ数式で表現するが、量子もつれはこの量子状態が2つ重ね合わされた状態を指し、これをうまく利用すると通常では考えられないことが可能になる。
 研究チームは、量子もつれを電子で検証するため、2つの電子が対になった電子対が起こす超電導現象に注目、量子もつれ状態にある電子対の2つの電子を空間的に引き離すことで量子もつれの変化が検証できると考えた。具体的には、2つの超電導体を2本のナノワイヤーでつなぎ、電子同士の電気的な斥力を利用して2つの電子が別の経路をたどるようにする。こうすると、異なる経路を通った2つの電子が終点の超電導体で再結合すれば電気抵抗は生じないが、途中で量子もつれが壊れると電気抵抗が生じるため、量子もつれの状態を明確に判定できるという。
 研究チームは、この理論を使えば離れ離れになっている2つの電子の量子もつれを自由に制御できるとしており、電子を用いた量子計算などの手法の確立につながると期待している。

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