九州北部の大気中の微小粒子状物質濃度変化の原因を解明
:産業技術総合研究所/国立環境研究所/福岡大学

 (独)産業技術総合研究所は12月17日、(独)国立環境研究所、福岡大学と共同で九州北部の福岡市と同市西方約190kmの五島列島福江島で2009年春から行っている大気中の微小粒子状物質(PM2.5 )の通年観測から、この地域での春季の同物質の濃度変動は主として地域外からの輸送がもたらしていることが分かったと発表した。
 PM2.5とは、分離装置で大気中に浮遊する粒子の内、粒径2.5μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の粒子を50%分離後に採取したもので、浮遊粒子状物質(粒径10μm以下)よりも明確に大気汚染状況を反映する指標になる。最近の東アジア地域の急速な経済発展に伴い、偏西風帯の風下の日本に運ばれて来る大気汚染物質の増大が心配されていることから研究陣は福江島(人口約4万人)の大気観測施設と、福岡市(人口約144万人)の福岡大学に自動測定器を設置、PM2.5濃度などを1時間ごとに測定する通年観測を始めた。
 そのデータから2009年4月上旬~中旬の大気中の粒子状物質の濃度変動と組成の分析を行なった結果、福岡市でのPM2.5濃度は福江市より約半日遅れてほぼ同様に変動し、4月の平均濃度も福江島の方が福岡市よりやや高いことが分った。
 濃度の高いPM2.5で割合が最も大きい物質は、石炭など硫黄を含む物質が燃焼して発生する二酸化硫黄が大気中で酸化されて粒子化した硫酸塩粒子で、次が粒子状有機物質だった。
 さらに、汚染物質濃度の高い気塊が現れた時、島内での汚染物質発生量が少ない福江島で福岡市より先に大気汚染の最大濃度が現れ、その濃度は福岡市より高いことも分かった。
 この結果は、国内での発生源対策推進だけではなく、国際協力による東アジア地域全体としての対策の重要性を示している。

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