高エネルギー加速器研究機構は12月16日、(財)高輝度光科学研究センター、広島大学、東京大学、日立金属(株)と共同で、アフリカのナミビア共和国で見つかった隕石(鉄隕石)の磁気特性を、高輝度光科学研究センターの大型放射光施設「Spring-8」(兵庫)で解析し、次世代磁気デバイスとして期待される新磁性材料を発見したと発表した。
鉄隕石の磁気特性は、地球上の鉄ニッケル合金と大きく異なることがこれまでも知られていたが、その起源は長らく謎のままだった。そこで研究チームは、物質科学の観点から精密な物性評価を行い、鉄隕石の磁性の謎を解くと同時に新磁性材の探索を行うことにし、SPring-8に設置された「光電子顕微鏡」を使い、ナノレベルの直接的な分析を試みた。
その結果、通常の鉄ニッケル合金では見られない新しい磁区構造を発見、鉄リッチな領域とニッケルリッチな領域に明確に分離しており、界面の近くに「テトラテーナイト」と呼ばれる鉄隕石特有の鉄ニッケル相の薄膜が積層して偏在することを確認した。
テトラテーナイトは、通常の鉄ニッケル合金に比べ保磁力と、磁気異方性(特定の方向への磁化の向きやすさ)が飛躍的に高く、鉄ニッケル合金の10分の1以下のエネルギーで磁性の向きが変わる特性を持つことが分かった。
テトラテーナイトの原料となる鉄とニッケルは、資源も豊かで、次世代磁性材料といわれる鉄プラチナに比べて格段に安いのが特徴。研究グループは、今回の研究結果をもとに、次のステップとしてテトラテーナイトを人工的に作る研究や機能性評価を既に始めている。
No.2009-50
2009年12月14日~2009年12月20日