筑波大学は12月6日、(株)半導体先端テクノロジーズ、早稲田大学、(独)物質・材料研究機構と共同で次世代集積回路として期待される「MOS(金属酸化膜)型電界効果トランジスタ」のゲート絶縁膜の信頼性劣化現象について新知見を得たと発表した。今後の集積回路の高信頼性ゲート絶縁膜の実現、しいては集積回路の寿命予測の新指針になると期待される。
MOS型電界効果トタンジスタでスイッチ役をするゲートには、電極の下に極薄のゲート絶縁膜があり、これまで酸化ケイ素が使われてきた。しかし、更なる回路の小型化、省エネ化に向け、ゲート絶縁膜材料として高誘電率の酸化ハフニウムが注目されている。ところが、酸化ハフニウムは、酸化ケイ素とは原子レベルでの構造が大きく異なり、どのように劣化するか、その要因がこれまでよく分っていなかった。
そこで、半導体テクノロジーズが最先端技術で作った高誘電率材料の酸化ハフニウム膜で劣化と回復の特性を詳しく調べた結果、信頼性劣化現象には少なくとも3つのタイプがあることが分った。[1]膜中に電荷が蓄積されるタイプ、[2]酸素原子が動くタイプ、[3]膜の組成、あるいは構造を変化させるタイプ、の3つで、これが電荷の蓄積が信頼性劣化の主な原因とされている酸化ケイ素との違いであるという。
酸化ハフニウムでは、正イオンのハフニウムと負イオンの酸素が長時間電圧をかけ続けると、弱いところから両電極に分離して行く結果、膜の組成を不均一にしたり、安定した結晶相を局所的に作ったりする。イオンの移動が原因なので、かける電圧が高いほど時間が長いほど変化が大きくなり、逆にイオンが動き難い状態にすれば、変化が小さくなって信頼性が上がる。その方法の研究開発が今後の課題といえそうだ。
No.2009-48
2009年11月30日~2009年12月6日