(独)物質・材料研究機構は11月30日、(株)フジミインコーポレーテッドと共同で表面が非常に滑らかで、かつ硬い、平滑性と硬度に優れた超硬合金皮膜を作製することに成功したと発表した。 炭化タングステンとコバルトからなる超硬合金の皮膜は、高温で溶かして吹き付ける溶射法と呼ばれる方法で作られ、様々な分野に使われている。しかし、コーティング中に炭化タングステンとコバルトの反応によって脆い化合物ができて皮膜が弱くなる難点や、皮膜の表面をつるつるにする鏡面化に非常に時間とコストがかかる問題を抱えている。 今回の成果は、同機構が開発した「ウオームスプレー法」と呼ぶ溶射に使う燃焼ガスの温度を精密に制御する新しい溶射法と、フジミインコーポレーテッドが開発したウオームスプレー法に適した直径が5~20μ(ミクロン、1μは100万分の1m)の顆粒状炭化タングステン・コバルト粉末を使い、平滑性と硬度に優れた超硬合金皮膜を作ることに成功したもの。 溶射法で得られる超硬合金皮膜の滑らかさは、原料粉末の粒子サイズを小さくすると良くなることは知られていたが、粉末が小さくなると溶融した粒子が溶射スプレーの先端に付着・堆積して成膜が困難になるステッピングという別の問題が生じる。 今回の顆粒状粉末を原料にしてウオームスプレー法で溶射すると、そのステッピングを起こすことなく極めて緻密で滑らかな表面を持つ超硬合金皮膜が得られる。 作製した超硬合金皮膜の表面粗さは、これまでの半分以下の1.8μ以下と滑らかで、硬さもビッカース硬度で1600以上を記録、従来値(同1200)を大幅に上回る。 詳しくはこちら |  |
原料の顆粒状炭化タングステン・コバルト粉末の拡大写真(提供:物質・材料研究機構) |
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