次世代メモリーの書き込み・消去のメカニズムを世界で初めて解明:筑波大学

 筑波大学は12月6日、将来のメモリーとして期待されている「MONOS型」と呼ばれるメモリーの書き込み・消去のメカニズムを原子レベルで解明したと発表した。同大学・計算科学研究センターの白石賢二教授らの研究グループの成果で、MONOS型メモリーでデータの書き込み・消去の際、メモリーを構成する原子の一つ一つで何が起きているかを量子力学に基づく理論計算を使い世界で初めて明らかにした。
 MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型メモリーは、トランジスタのゲート絶縁膜に酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造を作り、窒化シリコン膜中の原子レベルの空間(欠陥)に電荷を注入することでデータを書き込む「電荷トラップ型」と呼ばれるタイプのメモリー。小型・高速化が可能なことから、次世代メモリー候補として期待され、既にEEPROM(電気的にデータの書き込み・消去が出来る不揮発性メモリー)などに組み込まれているが、データの書き込み・消去を行なう時の窒化シリコン膜中の欠陥の振る舞いが、これまで全く分っていなかった。
 同教授らは、量子力学に基づく最先端の計算科学でこの問題に挑戦。その結果、[1]窒化シリコン中に酸素が混ざってできた欠陥では、データの書き込み・消去により元に戻らない不可逆的構造変化を起す傾向があるのに対して、[2]窒化シリコン中の窒素空孔による欠陥では、データの書き込み・消去をしても構造が元に戻る可逆的構造変化を起す傾向があり、酸素混入欠陥はメモリー機能の劣化を招くが、窒素空孔欠陥はメモリー機能の劣化を起こさないことが分かった。
 さらに、窒化空孔欠陥がデータの書き込み・消去によって起こる可逆的構造変化は、ある量子力学的効果に支配され、原理的に可逆的であることも判明した。
 こうした結果から、このタイプのメモリーは、データの書き込み・消去に対して耐性が強く、寿命の長いメモリーになると結論している。
 この研究成果は、12月8日(現地時間)に米国のボルチモア市で開催された「2009 IEEE国際電子デバイスミーティング」で発表した。

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