(独)産業技術総合研究所は11月27日、単層カーボンナノチューブの金属型と半導体型とを低コストで分離する方法を開発したと発表した。
代表的なナノテクノロジー材料として脚光を浴びているカーボンナノチューブには、単一の層でできている単層のものと、2層以上からなる多層のものとがある。その内の「SWCNT」と呼ばれる単層カーボンナノチューブは、合成すると金属的な性質を示す金属型と半導体的な性質の半導体型とが1対2の割合で混ざった状態で出来てくる。
金属型は液晶ディスプレーの透明電極などに、半導体型は透明で折り曲げできるフレキシブル・トランジスタなどへの利用が期待され、それぞれを高純度で安価に分離する技術の開発が求められている。
新分離法は、それに応えるもので、寒天の主成分アガロースをゼリー状にしたゲルを充填したカラム(アガロースゲル充填カラム)を使って金属型と半導体型を分離する方式。
アガロースゲル充填カラムにSWCNTの分散液を加え、分離液を流すと金属型だけがカラムを通り抜け、半導体型がカラムに選択的に吸着される。カラムに残った半導体型は、界面活性剤を含んだ溶液を流すと溶け出し、両者を分離・回収できるという仕組み。カラムは、繰り返し使える。
分離後のそれぞれの純度は、金属型が90%、半導体型は95%に達することを確認している。
同研究所は、ゲルの繰り返し使用と、自動化による人件費の削減が可能なことから分離コストを従来法の10分の1以下にできると試算している。
No.2009-47
2009年11月23日~2009年11月29日