高エネルギー加速器研究開発機構 は11月24日、茨城県東海村の大強度陽子加速器施設「J-PARC」で生成した素粒子「ニュートリノ」の初観測に成功したと発表した。 ニュートリノは、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノと、それぞれの反粒子を合わせた6種類があると考えられ、いずれも質量が極めて小さく、透過性が非常に強い。 同機構は、東海村のJ-PARCニュートリノ実験施設で生成する世界最強度のニュートリノビームを、295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にある東京大学宇宙線研究所の検出器スーパーカミオカンデで検出し、ニュートリノが別の種類のニュートリノに変わる「ニュートリノ振動」と呼ばれる現象を測定することにより、ニュートリノの質量など未知の性質の解明を目指している。 実験は、「東海村から神岡町へ」の英文「Tokai to Kamioka 」の頭文字をとって「T2K実験」と名付けられ、今回その“手始め”として東海村のJ-PARC内に設置された検出器(前置ニュートリノ検出器)を使ってニュートリノの初検出に成功したもの。 T2K実験は、海外からも注目され、日本を始め、米、英など世界12カ国から500人を超える研究者が参加する国際共同実験になっている。 J-PARCは、同機構と(独)日本原子力研究開発機構が共同で建設した世界最先端の施設で、今年3月に完成し、4月にニュートリノビームを初めて作り、今回生成したニュートリノの初検出に成功した。 ニュートリノ検出器は、ニュートリノがごく稀に物質と反応した際に生じる粒子を捉えることで、ニュートリノを検出する実験装置。 T2K実験では、J-PARC内に2種類の前置ニュートリノ検出器を設置している。今回ニュートリノを検出したのは、その内の「INGRID(イングリッド)」と呼ばれる検出器。約8tのモジュールが、縦横14台並べられた総重量100t強の装置で、ニュートリノビームの強度とその方向を高精度で測定できる。 今回の観測成功によりT2K実験が本格的に始動する。 詳しくはこちら |  |
J-PARC内の前置ニュートリノ検出器「INGRID」(提供:高エネルギー加速器研究開発機構) |
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