真正細菌の鋳型なしRNA合成酵素の反応機構を解明
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は10月5日、真正細菌由来の鋳型非依存性RNA(リボ核酸)合成酵素である「CCA付加酵素」が正しい長さのRNAを合成する分子機構を解明したと発表した。
 通常、細胞内でタンパク質が合成される際、遺伝情報はDNA(デオキシリボ核酸)―tRNA(転移リボ核酸)―タンパク質という順に伝わる。必要なアミノ酸を運ぶtRNAの配列は、DNAの配列を鋳型として合成される。しかし、近年、生体内には鋳型となるDNAに依存することなく配列を合成する鋳型非依存性RNA合成酵素が存在することが知られてきた。その詳細な反応機構の研究は、新しい遺伝子発現制御の解明に重要な役割を担っているが、詳細な反応機構は未だに分かっていない。
 tRNAの配列の中でも、端末にあるCCAという配列だけは、CCA付加酵素という特別な酵素によって、DNAの鋳型を用いずに合成される。
 同研究所は、この数年、鋳型非依存性RNA合成酵素であるCCA付加酵素について、X線結晶構造解析や生化学的解析などによる機構解明を行ってきた。
 CCA酵素は、クラスⅠとクラスⅡに分類できる。クラスⅠは古細菌(細胞内に核を持たない原始的生物のうち真正細菌以外の生物)、クラスⅡには真正細菌(通常の細菌やラン藻など)や真核生物(細胞質と区別できる核を持つ生物)のCCA付加酵素が属する。
 同研究所では、これまで古細菌のCCA付加酵素の反応について分子機構の解明を行ってきた。今回、真正細菌のCCA付加酵素の解析を行った。その結果、古細菌のCCA付加酵素の場合と同様、酵素タンパク質とRNAが共同で機能を発揮してはいるが、古細菌の場合と異なった分子機構で反応が進むことを見出した。
 真正細菌では、CCA付加酵素はタツノオトシゴに似た形をしており、ヘッド(頭)、ネック(首)、ボディー(体)、テイル(尾っぽ)の4つの部分からなっていることや、ヘッド部分とネック部分との共同作業でRNAが伸長し、伸長してきたRNA鎖配列を酵素タンパクが認識して最終反応が進行・終結することなどが分かった
 同研究所では、さらに鋳型非依存性RNA合成酵素の詳細な分子機構の解明について研究を進め、医薬などに応用できるRNA合成酵素の開発につなげたいとしている。
 この研究成果は、9月10日(英国時間)発行の欧州の分子生物学機関誌「EMBO Journal」オンライン版に掲載された。

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