(独)物質・材料研究機構は6月26日、室温を超える高温でもゼロ抵抗電流を運ぶことができる物質を設計したと発表した。新規な量子機能の研究開発に新たな方向を示す成果という。
■期待される斬新な量子機能の開拓
情報電子技術を支えるこれまでの電子デバイスは、微細化、高密度化の限界を迎えており、新しい原理に基づくデバイス開発が近年精力的に進められている。そうした中で最先端研究の話題の一つになっているのが「トポロジカル絶縁体」。
この物質は、バルク(塊)部分では絶縁的だが、エッジ(縁)に抵抗の伴わない電流を運ぶ量子状態が存在する。超電導では電子対が抵抗のない電流を運ぶが、量子状態にある単一の電子は、磁場の中で抵抗を伴わない電流を運ぶ。トポロジカル絶縁体はそうした物質で、これまで極低温下で見つかっている。
研究グループは今回、ペロフスカイト(灰チタン石)と同じ結晶構造を持つ反強磁性絶縁体に金の化合物の一原子層を挿入、これにゲート電圧を垂直方向に印加することで新しいトポロジカル状態が実現できることを理論的に明らかにした。
さらに、この物質の構造から室温を超える高温でも機能するトポロジカル状態が実現できる、つまり、室温以上でもゼロ抵抗電流を運べることが明らかになったという。
エッジ電流のスピンの向き(電子の回転軸の方向)は磁場ではなく電場で制御でき、斬新な量子機能の開拓などが今後期待できるとしている。