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ニホンザルが独特な越冬をしていること見つける―上高地で発見、世界初の新知見:信州大学/筑波大学ほか

(2021年11月30日発表)

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上高地のニホンザル(写真提供:信州大学)

 信州大学、筑波大学、英国バーミンガム大学などの国際共同研究チームは11月30日、上高地(長野県)に生きるニホンザルが河川に生息する魚類や水生昆虫類などを食べて厳しい冬を生き抜く独特の越冬をしていることを見つけたと発表した。

 ニホンザルは世界の人類以外の霊長類の中で最も寒い地域に生息する種で、上高地や志賀高原(長野県)の高標高域で暮らす集団が世界最寒地の集団とされている。  

 しかし、猿類が河川に生息する魚類を捕食することは知られておらず、世界で初めての報告といっている。

 研究には、他にニュージーランドのコースロン研究所が参加した。

 信州大は20年近くにわたって上高地・梓川(あずさがわ)をフィールドにしてニホンザルの調査・研究を行っており、その中で上高地のニホンザル集団が厳冬期に「川干し(かわほし)」という川の水を干す方法で水生昆虫を採取しているような行動をとっていることを度々観察している。そのニホンザルの「川干し」行動は世界的にほとんど知られていないためバーミンガム大のミルナー教授から、科学的な調査・研究をすべきとの提案がなされ糞のサンプルから厳冬期のニホンザルの食性を解明する解析に取り組んだ。

 研究は2017年から2019年にかけての冬季に糞を適宜サンプリング場所を変えながら合計38サンプル採取し数百万のDNA分子の配列が決定できる次世代シーケンサーにかけ糞内に含まれる餌由来のDNAをメタゲノム解析と呼ばれる手法を使って網羅的に解析、ニホンザルが餌として利用した動物由来のDNAを探した。

 その結果、一部のサンプルには陸域由来と見られる土壌昆虫類などのDNAも含まれていたが、多くは淡水域に生息する水生動物のDNAで、約半数にあたる18サンプルから節足動物(ユスリカ類など)のDNAが、2割弱の7サンプルからサケ科魚類のDNAが検出された。

 多積雪地域のニホンザル集団は上高地以外にも数多く知られているが水生昆虫や魚類を捕食するような行動は見つかっていないだけに「驚くべき結果といえます。オランウータンでは淡水魚を捕獲・捕食する行動が報告されていますが、猿類では初めての知見です」と研究チームは話している。

 ただ、ニホンザルがどのようなサケ科の魚類を捕まえているのか、捕獲の現場シーンは観察されていない。