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機械学習法で効率的なネオジム磁石の高特性化に成功―大型トラック、航空機、船舶など大型輸送機械などの脱炭素化に有効:物質・材料研究機構

(2021年11月15日発表)

 (国)物質・材料研究機構は11月15日、電気自動車などのモーターに使われる磁石として需要が急増しているネオジム磁石の製造に当たって機械学習法を導入することで、用途に応じた様々な特性の磁石を、少ない実験回数で合理的に作製することに成功したと発表した。

 ネオジム磁石は、佐川眞人(さがわ まさと)氏が住友特殊金属(現・日立金属)時代に発明した最強の永久磁石で、電気自動車のモーターや携帯電話の超小型振動モーター、家庭のエアコンなどに数多く使われている。

 温室効果ガスの排出削減に国際社会が動き出したカーボンニュートラル時代に、これから開発する大型トラックや航空機、船舶などの大型輸送機械の強力なモーター用磁石として期待が集まっている。

 ネオジム磁石は、ネオジム、鉄、ホウ素のミクロな結晶粒の向きがきちんと一方向に揃う構造にすることで性能が高まる。合金の割合や焼き固めの条件など、複雑で無数の組み合わせの中から最適条件を、ベテラン作業員の勘(かん)と試行錯誤に頼ってきた。もっと合理的で効率的な最適条件の探索が始まっていた。

 最近は、コンピューターがデータを反復的に学習し、そこに潜む特殊なパターンを見つけ出す機械学習法が進んでいる。材料開発でも、限られた数の実験データから特性を予測し、データを連続的に更新して次の実験条件を提案し、この過程を何度も繰り返すアクティブラーニング手法が応用されるようになった。

 研究チームのLambard Guillaume主任研究員と佐々木泰祐(ささき たいすけ)主幹研究員らが、ネオジム磁石の作成に機械学習の活用を提案し、アクティブラーニングを採用した。

 今回はハイブリッド自動車の駆動モーター用の磁石作りで、集めたデータを基に機械学習を使って作製条件を最適化し、磁石の試作を40回程度繰り返した。その結果、磁石の基本性能である保磁力を1.2T(テスラ)から1.7Tに増強でき、残留磁化を1.4T(当初より+0.2T)、最大エネルギー積を380kA/m(+130)に向上させることに成功した。同じ素性の磁石の中では最高クラスの特性になる。

 またこの製造過程で、磁気特性に影響を与える作製条件を6条件から3条件に半減させることができ、実験条件としての組み合わせを6,600万通りから770通りまで大幅に絞り込むことができた。

 ネオジム磁石の特性を効率的に高め迅速に開発するためには、アクティブラーニングが極めて有効であることを実証した。