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ダイヤモンドを用い高い空間分解能で電磁波を可視化―6Gに対応した高周波デバイスなどの検査に活用へ:筑波大学ほか

(2021年7月10日発表)

 筑波大学と名古屋大学の共同研究グループは7月10日、ダイヤモンドを用いて電磁波を可視化する、空間分解能の高い新しい電磁波イメージング法を開発したと発表した。5G(第五世代移動通信システム)や6Gといった高速無線通信帯域における、高密度に実装された高周波デバイスからの電磁波強度の可視化などが期待されるという。

 電磁波イメージングは、電磁波強度の空間分布の可視化のことで、非破壊検査手法の一つ。電磁波イメージングのための素子としては、これまで微小アンテナや電磁波センサアレーが用いられ、その空間分解能はミリメートルオーダーだった。

 研究グループは空間分解能の高度化を目指し、今回、ダイヤモンドの表面近傍(きんぼう)に高い密度で二次元的に形成される「ダイヤモンドNVセンター」と呼ばれるダイヤモンド結晶中の複合欠陥をセンサとして用いる手法を案出した。

 この複合欠陥が電子を捕獲した状態はユニークな量子スピン状態を持ち、周囲の静磁場、交流磁場の影響を敏感に受けて変化する。これにマイクロ波パルスシーケンスを照射してスピンロッキングを行い、ダイヤモンドNVセンターの量子スピン状態を介して電磁波強度を広視野光学顕微鏡上に像として取得することにより、微弱な電磁波の空間分布を可視化する手法を開発した。

 これにより、ミリメートルオーダーだった空間分解能はマイクロメートルオーダーと3桁も高まったという。実験では、シリコン基板上に形成した幅10µm (マイクロメートル、1µmは1,000分の1mm)の金属細線に周波数15MHz (メガヘルツ、1MHzは100万Hz)の微弱電磁波を印可し、その周囲に発生する電磁波強度の空間分布をμmオーダーの空間分解能でイメージングしたところ、金属細線の両端において電磁波の強度が大きくなっている様子が観測された。

 その結果、金属薄膜表皮効果による電磁波の強度分布が明らかになったという。

 今回の成果は、ポスト5Gに向けた高密度に実装された高周波デバイス、高周波回路等からの電磁波輻射や誘電率の可視化技術に広く寄与するとしている。