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有機熱電材料使い自立型電源―センサーへの応用でIoT加速も:産業技術総合研究所

 (国)産業技術総合研究所は1月21日、100~120℃の低温熱源から電力を得られる小型発電モジュールを開発したと発表した。温度差を直接電力に変換できる有機熱電材料を用いた重さ5g、2cm角ほどの大きさで、無線通信機の電源として利用できる。さまざまなセンサー情報をリアルタイムでやり取りするIoT(モノのインターネット)社会の実現に役立つ自立型電源になるという。

 開発したのは厚さ50㎛(マイクロメートル、1µmは1,000分の1mm )の有機熱電材料膜100枚と厚さ5㎛のニッケル箔99枚を交互に重ねて作った縦横22mm、厚さ5mm、重さ約5gの小型軽量の有機熱電モジュール。その一端を低温熱源に接触させれば、残りの一端との間に生じる温度差で電力が得られる。これまで熱源が低温だとモジュールの両端に効率よく発電できる温度差を保つことが難しかったが、新開発のモジュールでは重ねる膜の形状を最適化するなどして高い発電効率を得ることに成功した。

 モジュールの一端を120℃の熱源に接触させ、残りの一端では自然放熱によって冷却して両端に50℃の温度差を作ったところ、1㎠当たり約60㎼(マイクロワット)の電力が得られた。この電力で無線送信機器を動かし温度と湿度のデータ送信を試みたところ、データを受信したスマートフォンでそれらの数値を確認することができた。

 これまで有機熱電材料では自然放熱によって発電に必要な十分な温度差が実現できず、放熱フィンや冷熱源を使って強制的に放熱・冷却する必要があった。そのため電力など余分なエネルギー源が必要となり、どこにでも手軽にセンサーを設置してリアルタイムで製造設備や農作物の生育状況の管理などに利用する際の障害になっていた。

 今回の成果について、産総研は「世界で初めて熱源に設置するだけの自然冷却での実用的使用が可能になった」として、今後はより低温の熱源でも使えるよう開発を進める。