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沖縄島のやんばるで、飛べる鳥にもマングース被害が見つかる―固有種保全にマングースの防除拡大が必要:森林総合研究所

(2021年5月25日発表)

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沖縄島北部の固有種、ホントウアカヒゲ
(提供:森林総合研究所)

 (国)森林研究・整備機構 森林総合研究所らの研究グループは5月25日、「やんばる」と呼ばれる沖縄島北部の森林地帯で、この島の固有種の鳥類、ノグチゲラとホントウアカヒゲの2種がマングース被害を受けていたことを発見したと発表した。飛べないヤンバルクイナばかりか、飛べる鳥にまで被害が広がっているだけに、マングース防除の拡大が必要と呼びかけている。

 研究グループは、固有種のヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ホントウアカヒゲの3種について、2016年までの約10年間にわたり3年ごとに4回調査し、繁殖期における分布域の変化を明らかにした。

 3種の鳥の数とマングースの数、周辺の広葉樹林面積との関係は、3種ともにマングースが少なく、広葉樹林面積が広い地域に多く生息していた。広葉樹林面積の効果よりもマングース被害の方が影響が大きいことも分かった。

 飛べないヤンバルクイナは昔からマングース被害を受けていたが、飛べる2種についてもマングースが大きく悪影響を及ぼしていたことの発見は予想外だった。

 ノグチゲラとホントウアカヒゲは、地上に降りて餌を食べるときに昼行性のマングースに襲われたとみられる。現地ではマングースの消化管からノグチゲラの羽毛が見つかっている。

 沖縄島北部のやんばると奄美大島、徳之島、西表島の4地域は、世界遺産一覧表への記載が適当との勧告がなされ、固有種の保全が極めて重要とされている。

 世界遺産の評価基準には、外来生物(マングース)対策として、「もともとその地域にいた生物に悪影響を及ぼさないように捕獲などの対策が必要」と明示されている。

 今年7月のユネスコ世界遺産委員会で4地域の世界遺産登録が正式決定される公算が大きい。

 マングースは毒蛇のハブ対策として導入されたが、2007年にはやんばる北部まで侵入していた。環境省と沖縄県による防除活動の結果、2016年には北部でほとんど確認されなくなり、中部でも減少したため固有種の保全に効果を挙げている。

 しかし防除の手薄な南部は現在もマングースが多数生息しているため、そこではこれら3種の固有鳥類はほとんど見られないという。

 森林総研では、これら3種の鳥の分布をさらに拡大し、確実に保全するためには現在のマングース防除事業を継続するだけでなく、対象区域を拡大していくことが必要としている。