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越冬ハクサイ作りに付きもののつらい作業無くす―「頭部結束機」を開発、11月からモニター販売へ:農業・食品産業技術総合研究機構/東洋精機ほか

(2021年5月18日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は5月18日、東洋精機(株)、埼玉県産業技術総合センターと共同で冬を越して栽培される「越冬ハクサイ」作りに付きもののつらい作業を無くすことができる農機を開発したと発表した。「頭部結束機」といい、今までのような腰や膝を折り曲げての人手に頼っての作業から解放され、運転者一人で楽に能率的に頭部結束作業が行える。東洋精機が今年11月からモニター販売を開始する予定という。

 越冬ハクサイは春先まで畑で保蔵(保存)させたハクサイのことで、その栽培には独特の作業が欠かせない。霜が降りたり、気温が零度以下になるとハクサイの細胞内の水分は凍って葉が枯れてしまう。その劣化を防ぐためハクサイの周囲を覆っている葉(外葉)の頭部をヒモで結ぶ頭部結束という作業を加え内部が凍らないようにして厳しい寒さからハクサイを守る独特の越冬法がとられる。これを行なうと長期間にわたり出荷できるようになるため産地では昔から広く行われてきた。

 だが、この方法は多くの労力を必要とする。頭部結束作業は霜が降り始める頃に行われるが、栽培されるハクサイの数は10a(アール、1aは100㎡)当たり3,500個から4,500個になるといわれ、その一つ一つに腰や膝を折り曲げたつらい姿勢でヒモを巻いていかないとならない。

 この作業の軽労化を図ろうと研究グループが2019年から開発に取り組んできたのが今回の自走式の自動ハクサイ頭部結束機。大きさは、長さ1,610mm、幅740mm、高さ1,290mm。重さは、100kg。走行は、前輪駆動方式。2個の電動モーターで駆動し、操舵は左右のモーターのスイッチを操作して行う。

 運転者一人で腰や膝を曲げずに楽に作業が行え、運転者はハクサイが作られている畝(うね)にそってこの農機を操舵し結束部がハクサイの真上まで進んだところで止めて結束ボタンを押す。結束が終わったら次のハクサイの位置まで進む。この動作の繰り返しで連続結束を行なうという仕組み。

 研究グループは、開発機の現地試験を豊橋市(愛知県)で済ませているが結束成功率100%を確認、人力作業と同等以上の1時間約420個の作業能率を記録しているという。

 今後、更に大きさの異なるハクサイへの対応や高速化などの改良を加え、東洋精機が11月からモニター販売を開始する。