[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

葉緑体DNA立体化の仕組み解明―折りたたみたんぱく質を発見:京都大学/山口大学/茨城大学ほか

(2021年5月10日発表)

 京都大学、茨城大学などの研究グループは5月10日、光合成反応に欠かせない葉緑体のDNAが植物細胞内で立体構造をとる仕組みを解明したと発表した。葉緑体DNAを折りたたむ特殊なたんぱく質を発見、光合成に必要な立体構造を持つ葉緑体核様体を形成するために働いていることを突き止めた。二酸化炭素と水から炭水化物を作る葉緑体の働きを制御する新たなシステム作りにつながる可能性もあるという。

 DNAは生体内で生物の身体を構成するたんぱく質を作る遺伝情報を持つひも状の物質で、生体内では折りたたまれた固有の立体構造を持っている。植物の葉緑体DNAも細胞内で折りたたまれた葉緑体多様体になっているが、その仕組みは未解明だった。

 そこで京大、茨城大のほか山口大学、立命館大学の研究者が参加した研究グループは今回、身近な池や小川に生息する単細胞生物の緑藻クラミドモナスから精製した葉緑体核様体に含まれるたんぱく質を網羅的に解析した。その結果、DNAと結合する部位を二つ持つたんぱく質「HBD1」を発見した。

 遺伝子工学的な手法でこのたんぱく質を作る遺伝子の構造を一部改変したところ、葉緑体多様体は折りたたまれることなく、バラバラにほどけてしまった。一方、遺伝子を修復して二つの結合部位をたんぱく質に導入する修復をしたところ、バラバラだったたんぱく質は再び立体構造を持つ葉緑体核様体を形成した。ただ、結合部位の修復が一つだけの場合は立体構造の修復ができなかった。

 研究グループは「葉緑体核様体の構造は葉緑体DNAの複製・修復、遺伝子発言、遺伝などさまざまなプロセスに関与していると推定される」として、葉緑体の機能を制御する新しい技術の開発につながる可能性もあると期待している。