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今季初の高病原性鳥インフルエンザのウイルスを解析―感染した鶏は100%死亡することが試験で判明:農業・食品産業技術総合研究機構

(2020年12月14日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は12月14日、香川県内の養鶏場で11月に発生した今季国内初の高病原性鳥インフルエンザから分離したウイルスの病原性を解析したと発表した。このウイルスは鶏に対して非常に高い致死性を示し感染すると鶏は100%死亡することが接種試験で分かったという。

 高病原性鳥インフルエンザは鶏に発生する感染症のことで略称を「HPAI」と言う。動物の疾病に関する国際組織の国際獣疫事務局(OIE)は、4~8週齢の鶏に感染させて10日以内に75%以上の致死率を示す鳥インフルエンザをHPAIと定めている。2004年以降アジア大陸を中心に発生が進み、世界各国に拡がり我が国でも各地の養鶏場で発生し、11月5日と8日に香川県の2つの養鶏場で今季国内初めての死亡が発生した。

 農研機構は、11月25日にこの香川県の死亡鶏の全ゲノム(全遺伝情報)を解読し発表しているが、今回それに続く第2弾として死亡鶏から分離されたウイルス「香川2020」株の病原性解明に取り組んだ。

 試験は、つくば市(茨城県)の農研機構内にある重要な感染症病原体を取り扱う施設として国際的に認められている動物衛生高度研究施設の高度封じ込め実験施設で行った。

 その結果、香川2020株はHPAIの特徴的なアミノ酸配列を持っていることが先ず確認され、香川2020株を鶏の静脈に接種する静脈内接種試験を行ったところ、香川2020株を接種した鶏は100%死亡しOIEが定める致死率75%を大きく上回る非常に致死性の強いウイルスであることが分かった。鼻に香川2020株を噴霧する経鼻接種(けいびせっしゅ)でも全羽死亡する結果が出た。

 そこで研究グループは更にこのウイルスと過去に日本で見つかっている「山口2004」と呼ばれている株とで鶏が死亡するまでの期間に違いがあるかどうかを経鼻接種試験で比べた。

 すると、山口2004株を経鼻接種した鶏の方は2日で生存率が0%、つまり全部の鶏が死亡したのに対し、香川2020株を経鼻接種した方は4日目まで生存率100%が続くという明確な違いがあることが分かった。

 このことから研究グループは「鶏に対して(香川2020株は)高い致死性を示すものの、死亡するまでの期間が長い傾向が認められた」と話している。

 尚、今回のウイルス香川2020株は、2019年からヨーロッパで流行した株に近いことが分かっている。