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スパコン「富岳(ふがく)」を用い史上最大規模の気象計算を実現―気象・気候変動予測の精度向上の可能性示す:国立環境研究所ほか

(2020年11月20日発表)

 (国)国立環境研究所、(国)理化学研究所、富士通(株)、(株)メトロ、東京大学の研究グループは11月20日、スーパーコンピュータ「富岳」を利用した史上最大規模の気象計算を実現したと発表した。最新のスパコンと全球気象シミュレーション、それとデータ科学の協調・協働によって実現したもので、将来の大規模な気象予測の実現可能性が示されたという。

 現在の気象予測は、世界中で実施されている気象観測の情報と、コンピュータを用いた数値シミュレーション、そして観測データとシミュレーションを数学的な手法を用いて繋ぎ合わせるデータ同化により支えられ、成り立っている。

 それとともに観測データの利用効率をあげたり、メッシュのより細かい数値シミュレーションを実行したり、より多くのアンサンブル計算を行ったりするなどし、予測精度を高める試みが行われている。

 しかし、近年の集中豪雨や巨大台風の被害などに対処するには、これまでよりも一段と精度の高い気象予測が求められており、予測手法の総合的な向上が期待されていた。

 研究グループは、計算性能を競う世界ランキング4部門で1位を獲得した世界最先端のスーパーコンピュータ「富岳」を用い、スパコンと科学計算ソフトウエアとの間の協調設計(コデザイン)を推進、「富岳」で実行可能な最大規模の、高解像度・大アンサンブルデータ同化実験を実施した。

 コデザインの推進では、大気シミュレーションのための全球高解像度大気モデルNICAMと、データ同化システムの局所アンサンブル変換カルマンフィルタLETKFを用いた。

 実行したのは、水平3.5kmメッシュ、かつ1,024個のアンサンブル(シミュレーション計算)という、過去に例を見ないほど大規模な全球気象シミュレーションとデータ同化の複合計算。計算規模は、世界の気象機関が日々行っている気象予測のためのアンサンブルデータ同化計算のおよそ500倍の大きさに達する。

 これらの試行成果は、「富岳」の高い総合性能を実証するもので、今後、スパコン、シミュレーションモデル、データ同化システムのさらなる協調を推進すれば、より大規模な気象予報システムの実現が可能であることが示されたという。将来の気象予報・気候変動予測の精度向上が期待されるとしている。