トマトの着果に必要なエネルギー代謝の仕組み解明―果実の生産性向上や育種素材の開発に寄与:筑波大学ほか
(2020年9月7日発表)
筑波大学、帝京大学、(国)理化学研究所などの共同研究グループは9月7日、トマトが実をつけるために必要なエネルギー代謝の仕組みを解明したと発表した。トマトの生産性を向上させる新技術の開発などが期待されるという。
花のめしべの子房が受粉をきっかっけに果実へと分化するプロセスを着果といい、トマトにおいては、受粉後に生成される植物ホルモンであるジベレリンの働きによって着果が促進されることが知られている。
着果を始めたトマトの子房では活発な細胞分裂を伴う急速な成長が生じることから、その成長を支えるエネルギー代謝が重要な役割を担うと考えられているが、受粉やジベレリンが代謝を制御する仕組みや代謝の全容は明らかでなかった。
研究グループはこの解明に取り組み、今回ネットワーク解析や力学モデルの構築といった数理的な手法により、着果におけるエネルギー代謝の仕組みを解析した。
その結果、着果における転写、翻訳、代謝の多くはジベレリンの働きによって制御されていること、着果時には糖代謝が特に活性化することが分かった。
また、着果を制御する鍵遺伝子と、バイオマーカーとなる遺伝子の特定に成功した。
酵素フルクトキナーゼをコードするFRK2という遺伝子は転写、翻訳、酵素活性、代謝フラックスの各レベルにわたって利用できる汎用性の高い着果のバイオマーカーとなることが見出された。
今回同定された転写因子をコードするSIHB15A遺伝子は着果を促進する中心代謝のブレーキ役として受粉前の子房で機能していることも分かった。
これら一連の結果から、着果において、受粉やジベレリンが多くの中心代謝に関連した酵素の働きを、転写を皮切りとして変化させ、子房のシンク強度やエネルギー生産を高めるという代謝の仕組みの全体像が明らかになったとしている。
今後、トマトをはじめ果実の生産性を向上させる技術や育種素材の開発への貢献が期待されるという。