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日本産高級マスクメロンの全ゲノムを解読―香りや食味の向上、耐病性などの品種改良に期待:筑波大学ほか

(2020年8月19日発表)

 筑波大学生命環境系の江面浩(えづら ひろし)教授と(国)農業・食品産業技術総合研究機構高度解析センターの矢野亮一上級研究員らの研究グループは8月19日、高級マスクメロンの全ゲノム情報を解読し、データベース化して公開したと発表した。マスクメロンの品種改良に大きく貢献するとみられる。

 日本の高級マスクメロンは海外でも人気が高い。しかし昨今の市場価格の低迷と原油高の中で、更なる高品質化と栽培コストの低減が求められている。新たな育種や品質のデザインは、ゲノム(全遺伝情報)配列と遺伝子情報の解読を抜きには語れない。

 だが生物はなかなかその本性を明らかにしたがらない。一般に高等な生物ゲノムの中には、同じ塩基配列が繰り返して続く反復配列が多く含まれているが、その機能の働きはほとんど未解明だった。

 研究チームは、DNA分子の配列情報を効率的、大規模に読み取ることができる最新型装置のDNAシークエンサーとゲノム構造データを組み合わせることで、日本産高級マスクメロン「アールスフェボリット春系3号」の染色体配列を高精度に解読することに成功した。

 12本の染色体ゲノム配列は全長378Mb(メガ・ベースペア、DNAの長さを表す単位)(378Mb は、3億7,800万ベースペア)と長大なものだが、未決定領域をわずか94個残すだけで高精度解読に成功した。また約3万3,000か所の遺伝子領域も特定し、データベース化した。解読したゲノムDNA配列を「Melonet-DBデータベース(https://melonet-db.dna.affrc.go.jp )」として公開した。

 さらに遺伝子間のmRNA を分析し、発現パターンが類似した遺伝子群をグループ化、リスト化してメロン研究の世界的な中核データベースとして完成させた。「アールスフェボリット春系3号」以外の7つのメロン品種と野生種のゲノム配列情報も解読した。これには世界の高級メロン品種も含まれている。

 10系統のゲノム配列情報を直接比較解析することで、系統によって特定のゲノム領域にレトロトランスポゾン(可動遺伝子)が存在したり、しなかったりすることを見出した。

 レトロトランスポゾンは、自分自身をRNAに複写した後、逆転写酵素によってDNAに複写し返されることで細胞内を動き回る遺伝子。この遺伝子があるか無いかの違いで、遺伝子の新しい発現機構獲得や喪失に関わる可能性があると、研究チームは提唱している。

 全ゲノム配列のデータベース化で、香りや食味、耐病性などメロンの品種改良に貢献できるようになる。特に日本で育種された「アールスフェボリット系」の品種は、従来よりも高精度で正確な遺伝子多型解析が可能になる。また最近注目されているゲノム編集によって生産されたメロンの客観的な安全性評価も可能になるとみている。