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大口径円板の平面形状測定に新技術―検出精度5nm以下に:産業技術総合研究所

(2019年2月5日発表)

 (国)産業技術総合研究所は2月5日、直径60cmの大口径円板でも表面の凹凸を5nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下という高い精度で測定できる平面形状測定装置を開発したと発表した。直径30cmで32nm程度という産業現場での測定精度を大きく上回った。大口径化、高精度化が求められる集積回路用シリコンウエハーや液晶基板の平面形状を測定する有力な手段になると期待している。

 新技術では、物体表面が局所的にどの程度傾いているかを光学的に測定し、その角度分布を積分して表面の凹凸を調べるという原理を採用した。物体表面に光ビームを照射したときに、表面に局所的な傾きがなければ必ず入射方向と直角の方向に反射光が戻る装置「ペンタゴンミラー」を作製、物体表面の傾きを局所的に検出できるようにした。物体表面全体に光ビームを走査、その反射光が戻る角度のデータを処理することで表面の凹凸を割り出す仕組み。

 今回、ペンタゴンミラーなど光学測定系と試料を固定して回転させる高精度回転機構を組み合わせた平面形状測定装置を試作、性能試験を進めた。最大口径30センチの平面基板を対象に国家標準機「フィゾー干渉計」による測定結果と比較したところ、新装置による平面度測定結果が1nm以下の精度で一致していることが確認できた。

 フィゾー干渉計は産業界でも使われているが、平面度がはっきり分かっている参照面が必要。しかし直径30㎝の基板でも表面加工精度が32nm程度にとどまっており、利用できる参照面の平面度にも限界があった。そのため製造現場で計測できる平面度は32nm程度にとどまっていた。

 今回の装置について、産総研は「平面形状に限らず曲面形状も測定できるため、ミラーの絶対曲率測定などへの応用も期待できる」と話している。