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耐久性、信頼性に優れる熱電発電試験用モジュールを開発―ニッケル合金を熱電発電材料に用いて実現:産業技術総合研究所ほか

(2020年1月14日発表)

 (国)産業技術総合研究所は1月14日、耐久性に優れる信頼性の高い熱電発電モジュールを、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合と共同で開発したと発表した。発電特性試験装置の性能保証などのための標準参照用モジュールとして使用されることが期待されるという。

 産総研は熱を直接電気に変える熱電発電の研究開発を精力的に推進しているが、その一環として今回、熱電発電システムの基本構成部品である熱電発電モジュールの発電性能や耐久性などの試験に用いる標準参照モジュールを開発した。熱電発電材料の研究開発と並行して、発電システムの作製・普及を促進する狙い。

 開発したのは、機械的耐久性に優れるニッケル合金を熱電発電材料に用いたシステム。

 熱電発電システムは、電荷を運ぶキャリアが正孔のp型の熱電変換材料と、キャリアが電子であるn型の材料を、電気的には直列、熱的には並列につないだ格好になる。モジュールの上下に温度差を生じさせると、正孔と電子が高温側から低温側に拡散して電力が得られる仕組み。

 p型、n型熱電変換材料は一般に焼結体である場合が多く、強度的にはもろい。試験装置用のモジュールには優れた耐久性が求められることから、研究グループは焼結体よりも耐久性に優れたニッケル合金であるクロメル(Ni90Cr10)とコンスタンタン(Cu55Ni45)を用いてモジュールを作製した。

 合金は焼結体よりも熱伝導率が高いため、材料を中空に加工し、熱が伝わる面積を減らすことで焼結体と同程度の低い熱伝導を実現した。

 このモジュールの高温側を500℃、低温側を50℃とし、最大出力電力と最大変換効率を12回繰り返し測定したところ、それらの測定値はほとんど変化せず、非常に高い安定性が認められた。

 また、発電性能の120時間耐久試験を実施し、最大出力電力と最大変換効率の時間変化を測定したところ、これも非常に高い安定性が認められ、開発モジュールの優れた耐久性が確認された。

 これらの結果から、開発モジュールは性能を保証するための標準参照モジュールとしての使用が期待されるとしている。