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酸化グラフェンの光による酸素除去のメカニズムを解明―炭素二次元ナノシートの大量合成に貢献へ:岡山大学/筑波大学ほか

(2019年8月27日発表)

 岡山大学、筑波大学、九州大学などの共同研究グループは827日、酸化グラフェンに光を照射すると酸素が除去されるメカニズムを解明したと発表した。グラフェンや炭素二次元ナノシートを大量合成する際に有力な材料設計指針を与える成果という。

 酸化グラフェンは、炭素原子がハチの巣状に結合した二次元シート状物質グラフェンに、酸素官能基がついたもの。この酸化グラフェンを原材料に用いると、次世代の有力な機能性材料であるグラフェンや新たな機能を持った炭素二次元シートを大量に合成できると期待されている。しかし、酸素除去のメカニズムがこれまでは十分解明されていなかった。

 また、酸素グラフェンの酸素を適切に除去できれば、望みの機能を持った炭素二次元シートの作製にもつながることから、酸素除去の詳しい解析が求められていた。

 研究グループは今回、光照射直後の酸化グラフェンの電子状態、分子振動状態、分子構造をそれぞれ1兆分の1秒の時間分解能を持つ超高速過渡吸収分光法、超高速時間分解赤外振動分光法、超高速時間分解電子線回折法という最先端の技術を用いて観測した。

 さらに、酸素原子脱離の詳細なメカニズムを時間依存密度汎関数法という理論計算を用いて解析した。

 その結果、光の照射で酸化グラフェンが励起状態となった時に、酸化グラフェンの平面構造とエポキシ基に属する酸素原子との結合が不安定になり、酸素原子が脱離することが分かった。

 また、光照射による酸素除去は、酸化グラフェン中に様々な形で結合している酸素原子のうち、特定の結合をしている酸素原子のみが除去されることが、今回の研究で明らかになったという。

 このような光による選択的な酸素除去を活用すれば、望みの構造を持つ炭素二次元シートを効率的に合成することにつながるとしている。