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光と物質の相互作用を理論計算―ソフト開発で光科学に貢献:筑波大学ほか

(2019年2月1日発表)

 筑波大学、自然科学研究機構分子科学研究所などの研究グループは21日、光と物質の相互作用を極微の世界の理論である量子力学で計算できるソフトウエア「SALMON」を開発したと発表した。光を照射したときの物質中の電子の運動変化も計算でき、光と電子が密接に絡み合う現象を扱う最先端の光科学研究に役立つ。

 筑波大の矢花一浩教授らと分子研の故・信定克幸准教授の研究グループが、(国)量子科学技術研究開発機構、東京大学のほか、米ワシントン大学など内外の研究者らと共同で開発した。SALMONは誰でも利用できるよう公開、ウェブサイトから無償でダウンロードできるようにした。

 物質に光が照射されると物質中の電子が揺すられるが、その電子の運動は逆に光に影響を及ぼす。光はこうした複雑な相互作用をしながら物質中を伝わっていく。最先端の光科学研究は、物質中の電子の運動を光で測定したり自在に操作したりすることで大きく発展しているため、理論に基づいて光と物質の相互作用をコンピューターで計算するソフトウエアの開発が必要とされていた。ただ、これまでに開発されたソフトでは分子からナノ構造、固体までの多様な物質に対して光との相互作用を統一的に表現できるものはなかった。

 そこで研究グループは、矢花教授らが開発した固体中の電子の運動を計算するプログラムと、故・信定准教授らが開発した分子やナノ構造の電子の動きを計算するプログラムを統合。分子からナノ構造、固体までの多様な物質に対して光との相互作用を計算できるソフトウエアを実現した。

 研究グループは「最先端の光科学研究に大きく貢献する」と期待している。