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小脳の神経細胞の学習、記憶形成で新メカニズム―細胞レベルでの解明に役立つ:筑波大学

(2016年7月12日発表)

 筑波大学は7月12日、小脳の神経細胞の学習や記憶形成についての新しいメカニズムを解明したと発表した。

 医学医療系 山田朋子助教らの研究グループの成果で、学習や記憶形成のメカニズムを細胞レベルで解明していくのに役立つものと期待される。

 神経細胞は、人間などの情報処理に特化した多細胞動物に特有の細胞。人間の場合は、小脳に1千億個、大脳に数百億個あるといわれる。

 その細胞は、核とそれを取り巻く細胞体と、そこから伸びる他の細胞に刺激を伝える軸索、刺激を受け取るアンテナの役割を担う樹状突起からなり、外からの刺激によって大きく影響を受け、それが学習や記憶に重要な役割を果たしている。

 なかでも、外からの刺激によって引き起こされる神経細胞の脱分極(細胞が分極状態でなくなること)は、IEGと呼ばれる一連の遺伝子群を一過的に活性化させ、それが学習や記憶にかかわっていることが分かっている。

 しかし、それらの遺伝子群が活性化後速やかに抑制されるメカニズムや役割についてはこれまで注目されておらず、まだほとんど分かっていない。

 研究グループは、その解明に取り組んでおり、神経細胞で誘導されたIEGの発現抑制には「NuRD complex」と呼ばれる因子が必要で、IEGの発現抑制が小脳の神経細胞の分化と機能に重要な役割を果たしていることを見つけた。

 研究グループは、マウスを使った実験により、この抑制が発達段階の小脳の神経ネットワーク構築に関与していることを確認している。

 筑波大はこの成果について「生物の学習や記憶形成のメカニズムを細胞レベルから理解する上で重要な知見」と見ている。