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液晶などの駆動回路に新検査技術―印刷法生産ラインで非破壊検査も:産業技術総合研究所

(2018年1月15日発表)

 産業技術総合研究所は115日、液晶ディスプレーなどパネル型情報入出力機器の駆動回路を高速・高精度に検査する技術を開発したと発表した。回路の駆動状態を光で非破壊検査する方法で、3cm角の駆動回路も3分以内に検査できるようになる。パネルの大面積化、低コスト化には印刷法による駆動回路作りが期待されているが、検査技術の高速・高精度化が課題になっていた。

 液晶や有機ELを使ったディスプレーやタッチパネル、電子ペーパーなどの情報入出力機器は、微細な薄膜トランジスタを平面上に数百万個配列した駆動回路で液晶や有機ELを制御する。そのため回路パターンを印刷方式で基板に転写し、高品質の駆動回路を効率良く作る技術の実用化が求められている。

 今回開発したのは、印刷方式で作った駆動回路の品質を高速・高品質で検査する技術。駆動回路の薄膜トランジスタに電圧をかけて正常に駆動すると、半導体層の光透過率と反射率が1万分の1程度とわずかに変化する。新検査技術ではこの変化に注目して駆動回路面全体を駆動状態と非駆動状態で撮影、両画像の差を検出して個々の薄膜トランジスタが正しく動作しているかどうかを検出する。

 開発では検出に必要な計算を撮影と同時に処理できる画像演算装置も実現、一括検査可能な回路面積を大幅に増やすことに成功した。その結果、従来は1mm角にとどまっていた一度に検査できる面積を、1インチ当たり150画素の表示に必要な約3万素子の薄膜トランジスタ配列で3cm角にまで拡大。10分以上かかっていた検査時間も3分以内に短縮できたという。 

 新技術は、製造ラインにセンサーを取り付けてパネル型情報入出力機器を生産しながら検査する非破壊インライン検査にも使えるという。産総研は「印刷法による大面積デバイスの高品質化が期待できる」としており、今後は電子ペーパーなどを目標とした製造ラインでの実用化研究に取り組む。