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固体物質の相転移の予測が可能に―新たな相転移物質の発掘、開発に展望:東京大学/筑波大学

(2018年1月11日発表)

 東京大学と筑波大学の共同研究グループは111日、固体物質での相転移現象がコンピュータ計算で理論的に予測可能であることを見出したと発表した。未だ発見されていない新しい相転移物質をコンピュータで発掘できる可能性が開けてきたとしている。

 相転移は、0℃で液体の水が固体の氷に変わったり、100℃で水が気体の水蒸気に変わったりする現象。固体における相転移としては結晶構造や磁性の相転移、また金属-絶縁体相転移、結晶-アモルファス相転移、常伝導-超伝導相転移などいろいろある。

 相転移は温度のほかに圧力、磁場、電場、光などの外部刺激によりスイッチングできたりするため、相転移を応用した各種デバイスや素材がつくられている。

 研究グループは、固体物質を作る前に、その物質の相転移を予測できるかどうかという問題に取り組み、相転移発現の判定方法、発現する場合の相転移温度の予測、温度ヒステリシス(冷却過程と過熱過程での相転移の起こり方の違い)の有無の予測法を考案し、実在する物質を対象に、コンピュータ計算による理論予測を試みた。

 その結果、相転移の発現とその温度、温度ヒステリシスを理論的に予測でき、理論計算結果などを実際の合成物質で検証したところ、計算で予測された転移温度や大きな温度ヒステリシスの発現が確認されたという。

 研究グループは、「今回考案した手法により相転移や温度ヒステリシスの予想が可能であることが示された。将来AIと組み合わせることにより迅速な相転移材料の研究開発につながることが期待される」としている。