[編集発行] (公財)つくば科学万博記念財団 [協力] 科学技術振興機構(JST)・文科省研究交流センター

つくばサイエンスニュース

トピックスつくばサイエンスニュース

東北地域で栽培できるパン用米の開発に成功―不足している「米粉(こめこ)」の供給増に朗報:農業・食品産業技術総合研究機構

(2026年9月8日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は9月8日、パンの原料になる「米粉(こめこ)」が高収量で得られる米の新品種を開発した、と発表した。東北地域での栽培に適した米粉用米の開発成功はこれが初めて。不足している米粉の供給増につながることが期待される。

 米粉は、米粒(こめつぶ)を小麦粉のように細かく砕いた粉末。米粉一つの大きさは、数十㎛(マイクロメートル、1㎛は1,000分の1mm)といわれている。

 日本では、1998年に気流粉砕と呼ばれる新しい製粉技術が導入されるようになり、デンプンの損傷を抑えた微細な米粉が製粉できるようになったことで米粉を使ったパンの開発が進み、今ではパンのほかケーキ、麺類などこれまで主に小麦粉で作られていた食品にまで米粉が幅広く使われるようになってきている。

 こうしたことから、米粉用米の需要が増え、農林水産省の資料によるとその需要量は2009年の5千tから2025年には10倍以上の6万tにまで増えており、高まる米粉の需要に対し生産が十分に対応されていない状況で、2026年は需要に対し3万tの不足が見込まれると農研機構は見積もっている。

 加えて米粉は、グルテンフリーの面からも注目されている。

 グルテンは、たんぱく質の一種で、小麦粉には含まれているが、米粉には含まれていない成分で、グルテンを含まない食事に切り換えることをグルテンフリーといい、スポーツ選手などの間で世界的に関心を呼んでいる。

 しかし、日本のこれまでのパン用専用米は、関東以西を栽培適地としており、米どころの東北地方での栽培に適した品種がなかった。

 そこで、農研機構はその壁を突破しようと研究を進め今回、東北中南部での栽培に適した多収の米パン用新品種の開発に成功した。

 新品種は、雪のように白いふんわりとしたパンをイメージして「ゆきふわり」と名付け、耐寒性の「北海302号(後の「ゆきさやか」)」に多収の「ふくひびき」を交配して得た。

 秋田県大仙市の育成地で実施した生育試験では、主食用米として知られる「ひとめぼれ」の10a(アール、1アールは100㎡)あたりの玄米収量が641kgであったのに対し、今回の「ゆきふわり」はそれより20%以上多収の792kgを記録しており、耐冷性があって倒れにくく、東北地方中南部での栽培に適していることを確認している。

 また、宮城県学校給食会が行なったコッペパンの試作では「ひとめぼれ」より膨らみ、味が良く、同県大崎市のパン工房が行なった米粉100%のパン作りでも良好な評価が出ているという。

 農研機構と共同研究を行った全農(全国農業協同組合連合会)では、2026年度から今回の「ゆきふわり」の種子生産と、米粉パン用米の生産を開始している。