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国内のイネの最多収記録を更新―次世代イネの開発に成功:国際農林水産業研究センターほか

(2025年12月18日発表)

 (国)国際農林水産業研究センター(国際農研)と(国)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は共同で12月18日、国内最多収のイネとして知られる「北陸193号」の収量を更に7~9%上回る次世代イネの開発に成功した、と発表した。北陸193号に、代表的ブランド米「コシヒカリ」の遺伝子を導入して実現した。環境変化に強く猛暑の下や、低肥料下でも北陸193号より多くの米を収穫できる。両研究所は「地域適応性や食味(食べた時の味)などを検討し実用化に向けた更なる改良を進めていく予定」といっている。

 国際情勢の険悪化による肥料価格の高騰や、地球温暖化に伴う高温障害など稲作を取り巻く環境は厳しさを増しており、単位面積あたりの米の収量を上げる研究が重要性を増している。

 世界の人口の約半数が米を主食にしているといわれ、米の収量を上げる方法としては「穂数型」と「穂重型」と呼ばれる2つが知られている。

 イネ1株当たりの穂の数を多くしてそれぞれの穂により多くの籾(もみ)を実らせ米の収量を上げようというのが前者の穂数型。それに対し、1株当たりの穂の数を少なくし大きな穂に数多くの籾を付け収量を上げるというのが穂重型だ。

 50年以上も前に開発され、今なお作付面積日本一を保持しているコシヒカリは、穂数型の品種で、今回開発した新品種は、そのコシヒカリが持っているイネの穂数を増加させる「MP3」と呼ばれる遺伝子を、北陸193号に導入して得たもので、新品種の名称は「北陸193号-MP3」という。

 北陸193号の日本国内での10a(アール)当たりの玄米の最多収記録は、1.3tだが、研究グループは光合成能力になお余力があることから、穂数を増やすコシヒカリの遺伝子MP3を導入できれば更なる収量アップができるのではと見て今回の研究に取り組んだ。

 従来の研究では、籾の数が増加すると稔実率(ねんじつりつ:実が実る割合)が低下することが報告されているが、新開発の北陸193号- MP3ではそうならず、北陸193号より穂数が21~28%も増えるのに穂数増加に伴う稔実率低下は無く、最高気温が35℃を超える猛暑下で収量が北陸193号より7~9%多くなることを掴(つか)んだ。

 また、栽培試験の結果、窒素肥料を投入しない低肥料のもとでも新品種の玄米収量の方が北陸193号より約9%多くなることを実証した。