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直播(じかまき)に適した多収で味の良い水稲の新品種―東北地域向けに開発、業務用米に好適:農業・食品産業技術総合研究機構

(2019年11月27日発表)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は1127日、多収で味が良く、いもち病にも暑さにも強い、直播に適した水稲の新品種を開発したと発表した。東北地域向けに開発したもので、中食や外食に使う業務用米に好適という。既に秋田県で200ha(ヘクタール)の作付けが計画されている。

 直播とは、水田に種を直接まく稲の栽培法のこと。高精度な播種機が開発されたことなどもあって近年普及が進んでいる。農林水産省の資料によると、2017年度で全国の約3.3haの水田に使われ、苗を育てて植える従来の手間のかかる栽培法より労働時間を約2割減らすことができるといわれている。

 新品種は、いもち病に強い「奥羽406号」と多収の「ふくひびき」を交配して育成した。名称は、至福の実りをイメージして「しふくのみのり」と名づけた。

 食生活の多様化に伴い家でご飯を炊いて食べる家庭内消費が減少傾向にある一方で、調理されたご飯を家庭で食べる中食や外食向けの業務用米の消費量は増加の傾向にあり、より安価で味の良い業務用米が求められている。

 農研機構は、東北地域向けの業務用米に適した「萌えみのり」という品種をこれまでに開発し作付けを増やしているが、多収良食味の半面、稲の主要な病気の一つのいもち病や暑さに弱い弱点を持っている。

 それに対し、新品種は、多収で味が良く、いもち病に強く、高温に耐える高温耐性に優れているほか倒れにくい、などの特徴を持っているという。

 農研機構は、多収性を秋田県の大仙市にある同機構の東北農業研究センター大仙研究拠点で2015年から2018年までかけ他の品種とどれだけ違うか調べているが、10a(アール)当たり641kgという収量を記録している。この値は、古川農業試験場(宮城県)が開発した人気の銘柄「ひとめぼれ」を約1割上回るという。

 また、新品種は肥料を多く与える多肥直播栽培を行うと10a当たり754kgにまで多収となり、「ひとめぼれ」より約3割も多く収穫できることが確認できたとしている。

 秋田県で200haの作付けがスタートするのは2021年度だが、それとは別に2020年から利用許諾契約を結んだ企業が種子の生産を行うことになっている。