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ふ化前に鶏卵の雌雄を無傷で判別する技術を開発―オスのひよこのふ化直後の淘汰を回避へ:(株)日立ソリューションズ・クリエイト/農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2026年1月22日発表)

 (株)日立ソリューションズ・クリエイトと(国)農業・食品産業技術総合研究機構、九州工業大学の共同研究グループは1月22日、画像認識AIを用い、ふ化前に鶏卵の雌雄を無傷で判別する技術を開発したと発表した。オスのひよこが生まれるのを回避でき、ふ化直後の淘汰問題の解消につながるという。

 世界では、食用卵の生産に役立たないオスのひよこがふ化直後に年間66億羽も淘汰されているとされる。この課題を解決するため、ふ化に至る前に雌雄を判別してオスのひよこが生まれ出るのを回避し、ふ化直後の淘汰を抑えようと、ふ化前に雌雄を判別する卵内雌雄判別技術の開発が進められている。

 この開発に取り組んでいる共同研究グループは、今回、画像認識AIを活用し、卵を傷つけずに、最高97%の精度で卵内雌雄判別が可能な技術を開発した。受精卵が発育するために必要な温度や湿度、回転を卵に与えることを「ふ卵」といい、鶏の場合は約21日間のふ卵を経てふ化する。

 日立ソリューションズ・クリエイトは、ふ卵早期から胚およびその周辺に雌雄で異なる特徴が出るという農研機構の研究・知見を活用し、卵殻の一部を切除して卵内を撮影した胚とその周辺の画像から雌雄を判別するAIモデルを開発した。撮影画像をAIに学習させたところ、AIモデルは人間の目では区別できない、雌雄で異なる特徴を捉えることに成功した。

 日立と農研機構の両者はこの成果を踏まえ、卵を傷つけない雌雄判別に取り組み、胚と周辺を卵殻越しでも「AIで見える」状態にすべく実験を重ね、適切な鶏卵の設置方法と、カメラと光源の配置・撮影方法を見出した。

 さらに九州工大を交えた3者は、高い判別精度の実現を目指し、鶏卵の撮影画像のさらなる鮮明化に挑戦、雌雄判別に不要な情報の削減や、必要な部分の情報を強調する画像処理を実現した。

 日立ソリューションズ・クリエイトは今後、ふ卵場ごとの環境特徴に対応したカスタマイズモデルを開発するとともに、鶏卵企業とのパートナーシップ確立を通じ新技術の実用化を推進したいとしている。

 卵の状態のひよこはふ卵13日目に痛覚が生じるとされ、ドイツではふ卵13日目以降の卵の廃棄とオスのひよこの淘汰を法律で禁じている。今回開発した技術は欧州におけるこうした取り組みへの貢献も期待されるとしている。