海底のマントル中に有機物を発見―生物が関与しない有機物合成の解明に一歩:京都大学/広島大学/立命館大学/東北大学/高輝度光科学研究センター/早稲田大学/東京大学/高エネルギー加速器研究機構
(2026年1月14日発表)
京都大学や(公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)などの共同研究グループは1月14日、南太平洋タヒチ島の海底に存在するマントル由来の岩石中に「多環芳香族炭化水素」を主体とする「有機物」を発見したと発表した。「生物が関与しない有機物合成が、海洋下(海底より下)のマントルでも起こり得ることを示すものであり、マントル内における有機物合成過程の全容解明に向けた重要な手掛かりになることが期待される」と研究グループはいっている。
共同研究には、京都大学大学院理学研究科の三津川 到 博士課程学生、三宅 亮 教授、伊神 洋平 准教授と、広島大学、立命館大学、東北大学、JASRI、早稲田大学、東京大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、の研究者が参加し、得られた研究結果は英国の国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
地球の表面から深さ約2,900kmまでの高温岩石層をマントルと呼び、その内部でも生物とは無関係に有機物が合成される可能性がある、とする説は古くからあった。例えば、元素周期表を作ったことで世界的に有名なロシアの化学者メンデレーエフは、1870年代に生物が関与することなくマントル内部で有機物が合成される可能性を指摘している。
そして、2000年代以降になるとマントル内の数百~数千℃の高温かつ高圧を地上の実験装置内に作っての実験で、無機物から有機物が形成されるまでになってきている。
今回の研究は、それをさらに一歩進めようと海洋下のマントルに由来する岩石を探査し生物が関与しない有機物合成の“証拠”を見つけようと行った。
研究は、南太平洋にあるフランス領ポリネシアのタヒチ島産のマントル捕獲岩と呼ばれる岩石の中に取り込まれている大きさが2~3㎛(マイクロメートル、1㎛は1,000分の1mm)以下という超微細な包有物(内容物)を対象にして行われ、詳細に解析した。
その結果、多環芳香族炭化水素を主体とする複雑な有機物が一酸化炭素や二酸化炭素と共存していることが「STXM(走査透過型X線顕微鏡法)」を用いた分析により分かり、
有機物由来の芳香族炭素をR(赤色)、一酸化炭素をG(緑色)、二酸化炭素をB(青色)で示すRGB合成像マップを得た。
研究グループは「地球のマントルの大部分を占めている海洋下のマントルに由来する岩石中に有機物が保存されていることが示された点は、極めて意義深い」といっている。
今後は、高温高圧実験により今回発見した有機物の特徴を再現し、どのような反応を経て有機物が合成されるのか詳細に検討していく予定という。




