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オオバコの種子はダンゴムシの糞に反応して発芽を抑制―糞に含まれる化学物質を種子が捉えて食害を回避:京都大学/熊本大学/森林総合研究所ほか

(2025年12月9日発表)

 京都大学、熊本大学、(国)森林総合研究所、(国)理化学研究所など6大学2研究機関からなる共同研究チームは12月9日、オオバコの種子がダンゴムシの糞に含まれる化学物質を感知して発芽を一時的に止め、ダンゴムシによる食害を回避している仕組みを発見したと発表した。

 植物の種子が光や温度などの環境刺激に応じて発芽時期を調整することは知られているが、食害を及ぼす動物の刺激に反応し、食害を回避することが分かったのはこれが初めて。こうした反応はオオバコに限らず他の植物にも見られる可能性があるという。

 オオバコは道沿いや山野によく見られる多年草で、オオバコの群落内ではダンゴムシが親株の古い葉を頻繁に食べるだけではなく、種子から出たばかりの幼根を食べて芽生えを枯死させている。また、親株の葉や芽生えを食べたダンゴムシは周囲に多くの糞を蓄積している。

 研究チームは自然界で観察されるこれらのことから、「オオバコの種子はダンゴムシの糞を感知し、発芽を一時的に抑制しているのではないか」「芽生え時の食害を回避するそうした発芽応答が自然選択により進化しているのではないか」と考え、ダンゴムシ類の糞が種子の発芽や芽生えの生存に与える影響を調査した。

 オオバコの種子をシャーレに単独で播いた実験では、発芽率は約97%と高かったのに対し、ダンゴムシの糞と一緒に播いた場合、発芽率は約20%と大きく低下した。

 降雨によって糞が流される状況を模倣し、種子周辺から糞を水洗で除去したところ、発芽していなかった種子が約2日後には正常に発芽するのが認められた。このことから、オオバコの種子は糞が除去されるまで発芽を抑制することが分かった。

 連続撮影システムを用いて発芽や食害の経過を20日間観察・記録したところ、糞のある条件下では発芽が雨天時に集中することが認められ、糞に含まれる発芽抑制物質が雨で洗い流されることで発芽が促進されることが示唆された。

 そこで、この発芽抑制物質を調べたところ、糞中に含まれる多糖類の一種のトレハロースと、植物ホルモンの一種のアブシジン酸(ABA)が特定され、これらの成分が水で洗い流されると発芽が再開されることが突き止められた。

 今回の研究で、植物の種子が動物の排泄物に含まれる化学物質を情報源として利用するという、新たな生態的相互作用の存在が明らかになった。今後、植物と動物の間の化学的コミュニケーションの進化を明らかにしたいとしている。