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M9級超巨大地震のプレート破壊過程を精密に解析―カムチャツカ沖での再発なぜ起きた:筑波大学ほか

(2025年12月9日発表)

 筑波大学、(国)海上・港湾・航空技術研究所などの共同研究グループは12月9日、今年7月にロシアのカムチャツカ半島沖で起きたM(マグニチュード)9クラス超巨大地震のプレート破壊過程を精密に解析した、と発表した。

 プレート(地球の表面を覆っている岩盤)部では、陸側プレートの先端部分で海側の海洋プレートの沈み込みが起こり、そのひずみが限界に達すると耐えきれなくなり、陸のプレートが跳ね上がって大きな地震が発生する。

 しかし、M9クラスの超巨大地震となると、数百年から1千年程度の間隔で発生するもの、とこれまでは考えられてきた。

 ところが、カムチャツカ半島沖では、僅か73年前の1952年に今回とほぼ同じ場所で同じ規模のM9地震が起きており、再発は地震学の常識を覆す現象と世界的な話題となり、なぜ僅か73年という短い期間で繰り返し発生したのかの解明が求められている。 

 今回の研究は、今年7月のカムチャツカ半島沖超巨大地震の発生時の現象を精密に解明しようと、京都大学、東北大学と共に取り組んだもので、国際地震観測網のデータと筑波大が開発した「PDTI(ポテンシー密度テンソルインバージョン法)」と呼ぶ最新の地震波解析手法を用いM9級超巨大地震でどのような破壊が生じたのか精密に解析した。

 PDTIは、地震の波形情報から断層の形状や「すべり」の大きさなどを高い精度で推定できる新手法で、先ず2025年の地震で73年前の1952年とほぼ同じ規模の約500kmにも及ぶ範囲が破壊していたことを明らかにした。

 そして、震源域の南西側の広い領域で、9~12mにも達する大すべりの発生を見つけることに成功した。

 この値は、1952年以降73年の間のカムチャツカ半島沖のプレートの沈み込み量約6mを遥かに上回る。

 つまり、2025年のM9地震は、蓄積されたひずみの2倍前後もの大きさのすべりを起こしていたことになる。

 さらに、大すべりが生じた領域では、「すべり加速」という特異な現象が起きていたことも分かった。

 これらの解析結果から、2025年7月のカムチャツカ沖超巨大地震は、1952年の地震で解放しきれずに残っていた古いひずみとその後の73年間に新たに蓄積されたひずみとがまとめて解放されたために起きたと考えられる、と研究グループは見ており、ひずみの残り方などが巨大地震の再来間隔を大きく変動させることが分かったとしている。