新材料の探索効率化へ―複数のAIが自発的に協力:物質・材料研究機構ほか
(2025年12月10日発表)
(国)物質・材料研究機構と筑波大学は12月10日、複数のAI(人工知能)が自発的に情報交換しながら新材料を探索する自律自動AIシステムを開発したと発表した。3つのAIをネットワーク化し、それぞれ別の物性値を同時に最大化できる材料を探索させたところ、最適な新材料を見つけるスピードを向上させることに成功した。触媒や蓄電池、半導体など画期的な新材料が欠かせない最先端技術の開発研究を効率化するのに役立つと期待している。
研究グループがヒントにしたのは、人間が研究開発をする際のコミュニケーションの在り方。人間は共同研究をする際に自分が得た研究データを相手に渡すだけではなく、データから得た知識や知見を伝え、互いに共有しながら研究を進める。
そこで研究グループは、この人間のコミュニケーションの在り方をモデルに3つのAIシステムを結合。各AIがそれぞれの実験データを共有するだけでなく、互いに連携して実験で得た知識や知見も共有できるようにした。その結果、複数の物性値を同時に最大化させられる新材料を探索する自律自動AIネットワーク技術が実現できた。
今回、それぞれ別の物性値(スピン分極率、キュリー温度、磁気モーメント)を極大化する3つの自律自動AIネットワーク技術を開発、これらの物性値を同時に極大化できる物質の探索を試みた。その結果、各AIがそれぞれ独立に探索するよりも、相互に実験で得た知識や知見を交換し共有した方が、最適物質に探索に早くたどり着くことができたという。
今回の成果を受けて、研究グループは「多種多様な自律自動AIシステムが、それぞれの領域で画期的な新規材料を発見・合成していく」と予測。将来的にこうした潮流がさらに進めば、それらのシステムが相互に連携する巨大なネットワークが新材料にとどまらず、より大きな価値を生み出すカギになるとみている。そのため今後は、複合的な社会課題への挑戦なども見据えた、より巨大な自律自動AIネットワークの構築を目指す。



