卵を守るためハダニも排泄の場所を特定―排泄場所を巣の中央に移すと卵の生存率低下:筑波大学
(2025年11月10日発表)
筑波大学の研究チームは11月10日、集団生活を送る小型の節足動物、ケナガスゴモリハダニが、巣の特定の場所に排泄することで卵を排泄物の害から守っていることを突き止めたと発表した。
生物の集団生活にとって排泄物の適切な管理は病気の予防や衛生に欠かせない。アリやハチなど多くの社会性昆虫では、巣の外で排泄したり、巣内の排泄物を巣外に運び出したりするといった行動がみられる。
しかし、こうした行動がどの程度、生存や繁殖に有利に働くのかを実験的に実証した研究はこれまでほとんど行われていない。
親世代と子世代が同居する亜社会性ハダニのケナガスゴモリハダニは、巣の出入り口付近の特定の場所でのみ排泄する「共同トイレ」行動をとることが知られている。そこで、研究チームは今回この行動にどのような適応的意義があるのかを調べた。
具体的には、このハダニの寄生植物の一つであるクマザサから抽出した化学成分を用いて、ハダニの巣内における排泄場所の位置や数を人為的に操作した。そして、異なる密度(雌成虫5匹の中密度と同7匹の高密度)の雌集団において繁殖や生存への影響を比較した。
調査の結果、排泄場所を巣の端から中央に変えると、成虫や幼虫の生存には大きな影響は見られなかったものの、高密度条件では卵の生存率がわずかに低下することが分かった。また、どの密度条件でも排泄場所の操作によって巣の増築が促進されることが明らかになった。さらに、巣の出入り口を物理的に塞(ふさ)ぎ、巣の増築を妨げたところ、中密度条件でも卵の生存率が著しく低下することが分かった。
これらの結果から、排泄物の空間的な管理は特に、動くことのできない卵の生存にとって極めて重要であることが示されたとしている。



