有機半導体を用い無線電力の整流を担うダイオード実現―IoT向けの無線通信への応用に期待:東京大学/物質・材料研究機構ほか
(2025年9月19日発表)
東京大学、(国)物質・材料研究機構、岡山大学、ジョージア工科大学、コロラド大学の国際共同研究グループは9月19日、有機半導体を用いた整流ダイオードにおいて、920MHz(メガヘルツ)の交流電力を直流電力に実用的な効率で変換することに世界で初めて成功したと発表した。IoT(モノのインターネット)向けの無線通信への応用が期待されるという。
IoTは家電製品や自動車、建物、あるいは工場の機器など、さまざまな「モノ」をインターネットでつなぐ技術。その普及、浸透には無線によって情報や電力をやりとりする素子が欠かせないが、数メートル程度の通信距離を可能とするには920MHzといったUHF(極超短波)帯での通信が必要とされる。
この素子の素材として期待されているのが、フレキシブルな電子デバイスを製造できる有機半導体。しかし、これまでの有機半導体素子では動作速度が十分でなかった。
研究グループは今回、有機整流ダイオードの性能を飛躍的に向上させ、920MHzにおいて、これまでと比べて1,000倍以上高い電力変換効率を実現。有機エレクトロニクス素子として初めてGHz(1,000MHz)領域で 実用的に動作することを示した。
作製したのは、下部電極の上に有機半導体インクをコーティングし、その上に上部電極を重ねた構造のもの。下部電極には還元性のある二量体錯体を電極表面に作用させる手法を採用、この錯体が電子を供給することで電極表面に電子が注入される。下部電極表面には、錯体カチオン分子が単分子膜の厚さで自己組織的に吸着する。
作製されたダイオードは、電圧の方向によって流れる電流が1,000倍以上異なり、一方向にのみ電流を流しやすい整流特性を持つ。整流機能は、無線通信素子が電波から電力を取り出して動作するために不可欠な技術であり、成果は今後のIoT応用に大きな貢献が期待されるとしている。