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転職が頭痛・不眠の原因にも―全国2万人調査で解明:筑波大学

(2025年9月22日発表)

 転職すると頭痛や倦怠感、不眠などになりやすい。筑波大学は9月22日、過去1年以内に転職した人は、転職していない人に比べ、このような症状を訴える人の割合が高いことが分かったと発表した。全国約2万人を対象にしたインターネット調査で明らかにした。転職がチャンスにもリスクにもなる現代社会では、働く人の健康を守る仕組み作りがますます重要になると指摘している。

 調査したのは筑波大付属病院の伊東 完 講師。全国47都道府県に住む15歳から79歳までの約2万人を対象に、2022年と2023年の2回にわたってインターネットを用いてアンケート調査を実施、その結果を分析した。

 2023年時点で「過去1年以内に転職を経験したか」と尋ねたところ、6%の人が転職を経験、そのうち2%は「人生で初めての転職」だった。そこでさらに2023年に新たに頭痛や不眠、倦怠感などの症状を訴えた回答を分析した。

 その結果、転職した人はしていない人に比べて、これらの症状を訴える割合が高いことが分かった。特に、初めて転職を経験した人は、頭痛や不眠を訴える割合が2~3倍にまで上がっていた。

 そこで、これらの症状が出る背景を探るため、転職者の職場環境についても調べた。すると、転職した人では「残業が多い」「仕事のペースを自分で決められない」「夜遅くまで働くことが負担」など、職場のストレスを訴える答えが多かったという。さらに、いじめやパワハラなどを受けていると答えた割合も高い傾向にあった。

 これらの結果から、伊東講師は「転職がストレスの原因となり、心身の不調につながっている可能性が明らかになった」「特に初めての転職では不調のリスクが高いため、入職初期のサポート体制や職場環境の整備が必要」として、企業や行政が転職者のメンタルヘルス支援を強化していく必要があると訴えている。