2040年までに70%以上のサンゴ礁の成長止まる―サンゴ礁の成長不足が高潮や沿岸の浸水リスク高める:筑波大学
(2025年9月24日発表)
筑波大学を含む8カ国からなる国際研究チームは9月24日、現在のレベルで二酸化炭素(CO2)の排出が続くと、2040年までに70%以上のサンゴ礁の成長が止まり、現在から2℃の気温上昇により、2100年には99%以上のサンゴ礁が成長不能になることが分かったと発表した。
サンゴ礁の成長不足と、温暖化による海面上昇の二重の作用により、サンゴ礁上の水深が増すことから、高潮や沿岸の浸水リスクが高まるとしている。
サンゴ礁は多くの生き物のすみかであるだけではなく、水質浄化や防波堤など、海岸を守る役割を果たしている。しかし近年、地球温暖化による海水温の上昇やサンゴの病気、水質の悪化などによって、世界中でサンゴ礁の衰退が進んでいる。なかでも西大西洋地域では白化現象や死滅が広がっている。
研究チームは、米フロリダやメキシコ、ボネール島(ベネズエラ沖)など400カ所以上のサンゴ礁を調べ、過去の化石サンゴ礁のデータと、現在の生態データを組み合わせて成長の様子を分析、サンゴ礁の成長力を算出した。特に、サンゴの種類ごとに異なる骨格の空隙率を精密に測定し、より正確な成長速度を推定した。
その結果、多くのサンゴ礁の成長速度はすでに海面の上昇速度を下回っており、現状と同じレベルのCO2排出が続けば、2040年までに70%以上が浸食状態に転じることが明らかになった。さらに2100年までに気温上昇が2℃を超えると、ほぼ全てのサンゴ礁が成長をやめるだけではなく、サンゴ礁が削られる方向へ進むと予測された。
こうなった場合、サンゴ礁の成長不足と海面上昇が重なり、サンゴ礁上水深は平均で0.7~1.2m増加し、高潮や波浪の影響を強く受けるようになる。沿岸の浸水リスクは大幅に高まり、サンゴ礁の背後に広がる、サンゴ礁によって外界から隔てられた浅い水域のラグーンや、海草藻場などの生態系を根本から変える可能性がある。
サンゴの回復や修復の試みは現在限られた小規模な成功例にとどまっており、大きな困難を伴っている。気温上昇を現在から2℃未満に抑えることができれば、一部の地域ではサンゴ礁が海面上昇にある程度対応できる可能性は残る。そのためにはCO2排出の大幅な削減が不可欠と指摘している。