航空機の排気中からオニオン状のナノ粒子を発見―高分解能透過型電子顕微鏡による観察で明らかに:国立環境研究所ほか
(2025年5月14日発表)
(国)国立環境研究所とチューリッヒ応用科学大学(スイス)、東京都立大学などの研究チームは5月14日、航空機の排ガス中に含まれる粒子を高分解能透過型電子顕微鏡を使って微細に調べたところ、従来からよく知られている煤(すす)粒子のほかに、内部が玉葱(たまねぎ)のように層状をしたオニオン状粒子など、3種類の新たな微粒子を発見したと発表した。これら粒子の健康や気候への影響研究が求められるとしている。
航空機に広く利用されているターボファンジェットエンジンの排気ガス中には、不揮発性のいわゆる煤粒子が含まれているが、煤粒子よりも、硫酸塩や有機物から成る揮発性の粒子の方が多い傾向にあるとされている。しかし、揮発性粒子の排出とその生成メカニズムについてはこれまでよくわかっていなかった。
研究チームは、揮発性粒子の排出・生成メカニズムに関する情報取得を目指し、航空機が大気中に排出しているナノ粒子を捉え、その物理的・化学的特性を調査した。
調査は、エンジン出口とエンジン出口から15m下流で排気粒子を薄い膜で採取し、高分解能透過型電子顕微鏡を使って粒子の形態や内部構造などを観察した。
その結果、内部構造の異なる4種の粒子を検出した。
1つは、典型的な煤粒子で、不揮発性の粒子。炭素原子の六角形状結晶から成るグラフェンと推定される短い層が不規則に積層された構造になっていた。2つめのタイプは、オニオン状粒子で、グラフェンと推定される層が、玉葱のように、長く球状に繋がって積層した構造をなしていた。
第3のタイプは、結晶構造を持たないアモルファス粒子。第4は、アモルファス粒子に比べると像がぼんやりとしたトレースアモルファス粒子だった。
観察されたこれら排出粒子は粒径が10~20nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度と極めて小さく、球状の単一粒子の割合が多かった。排出粒子のうち第1タイプの煤粒子については長年にわたる研究の歴史があるが、他の3種類の粒子は今回の研究で初めて発見された。
エンジン出口から15m下流の粒子も測定したため、エンジン下流で生成される揮発性粒子の観察が可能になり、その評価を得ることができたという。
航空機排ガス粒子は温室効果など気候への影響や健康への影響が懸念されていることから、今後新発見のオニオン粒子などに関するさらなる研究が重要としている。