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誤情報を正すには?―検索動作の振り返りが重要:名古屋工業大学/理化学研究所ほか

(2025年5月13日発表)

 名古屋工業大学、(国)理化学研究所などの研究グループは5月13日、フェイクニュースなどの誤った情報を信じている人にインターネットで正しい情報を伝えるのに効果的な手法を発表した。これまでの研究で自分が信じる内容の訂正情報は検索時に無意識に避けている傾向があることを伝え、自らの検索行動の振り返りを促すのが効果的なことを明らかにした。今後は心理学や認知科学、情報科学も含めて、訂正情報をより効果的に伝える手法の開発を目指す。

 誤った情報を正すファクトチェック情報はオンライン経由で提供されることが多い。これまでの研究から、「自分が信じている誤情報の訂正記事」をインターネットで読むのに必要なパソコンのクリック動作は、意識的に避けられる傾向があることがわかっていた。

 そこで名工大、理研のほかに東京学芸大学、名古屋大学、大正大学、東北大学も参加した研究グループは、こうした人々(ファクト回避群)を対象に訂正記事を読んで自分の誤った信念を正すのに最も効果的な方法を探った。

 実験では、ファクト回避群の人を対象に、①自分のクリック動作傾向を振り返ってもらう「メタ認知的介入」、②訂正情報をクリックされやすいリストの上位に配置する「ランキング介入」、③何も介入しない、の3つのグループに分け、それぞれどの程度誤った信念を正すのに効果があるかを調べた。

 その結果、訂正情報へのクリックの回数を増やすのに最も効果的だったのは「②ランキング介入」でクリック数は33%増、続く「①メタ認知的介入」が14%増だった。しかし、その一方で誤った信念を正すのに最も効果的だったのは、自分のクリック動作傾向を振り返ってもらう「①メタ認知的介入」だった。しかも、その効果は1週間後も持続したという。

 これらの結果から、研究グループは「クリック数のような測定しやすい指標の最適化のみを追求すると、意味のある認知的関与を支援するという本質的な価値を犠牲にするリスクがある」「ユーザーが誤情報を批判的に検証することを支援できているかを評価することが不可欠」と話す。このため今後は、心理学や認知科学、情報科学の学際研究を進めて認知とデジタル環境の相互作用を解明し、訂正情報をより効果的に伝える方法の開発を目指す。