内陸大地震で生じる断層破壊を解明―岩石の「延性変形」が発生原因:産業技術総合研究所ほか
(2025年5月12日発表)
(国)産業技術総合研究所などの共同研究グループは5月12日、内陸大地震の際に地下の震源付近で生じる断層破壊を過去の大地震の岩石を調査解析することで解明したと発表した。
研究には、産総研のほか東京大学、筑波大学が参加した。
内陸大地震の震源の多くは、深さ10km付近の地下に位置していることが知られ、300~350℃の高温状態になっている。
今回の研究は、過去の内陸大地震の際には震源近くにあって、現在は地表に露出している断層を対象にして行った。
日本は、世界的に見ても地震の多い地域の一つで、三重県内には日本列島最大の断層である中央構造線沿いに過去の大地震の断層構造が当時のままの状態で地表に常温で露出している場所がある。
今回の成果は、その過去のままの状態で露出している岩石を採取して得たもので、解析の結果「延性変形(えんせいへんけい)」と呼ばれる現象が地下の断層の破壊発生につながっていたことが分かった。
延性変形とは、物体が外から大きな力を受け、弾性限界(元に戻らなくなる限界点)を超えた力が加わると、破壊することなく引き伸ばされる現象のこと。
金属は、強く引き延ばして延性的に変形させると内部に微小な空洞が生じ、さらに空洞
の成長・合体が起こって強度低下を招き最終的に破壊してしまう。
金属の世界では、既にこの延性変形で生じる微小空洞の発達状況を把握することによって破壊のある無しの予測が行われている。
採取した中央構造線内の岩石は、高温と大地震に遭遇し力が加わっていたため、その延性変形によって内部に破壊のきっかけとなる最小サイズ数百㎚(ナノメートル、1㎚は10億分の1m)未満の微小空洞が発生し、金属同様にその成長・合体が起こって断層の破壊が起きることが分かった。
この解析結果から、研究グループは、岩石に生じる微小空洞の発達状況を把握できるようになれば、内陸大地震の発生予測が可能になると見ている。
産総研は「得られた知見は新たな地震予測手法(の開発)につながる可能性がある」と期待を寄せている。