「対流ジャンプ現象」の発生メカニズムを解明―梅雨明けに深く関係:筑波大学
( 2025年1月10日発表)
筑波大学の研究グループは1月10日、関東以北の梅雨明けに深く関係している「対流ジャンプ現象」が発生するメカニズムを解明したと発表した。
対流ジャンプ現象は、7月の下旬にフィリピン東方海上の降水域が急激に北東方向に拡大する気象現象のこと。大気のテレコネクション(遠隔影響)によって遠く離れている気象が互いに変動して高気圧が発生することにより対流ジャンプの発生は日本の関東以北に劇的な梅雨明けをもたらす。
一方、対流ジャンプ発生域を含む西部太平洋の亜熱帯域では、中緯度の対流圏上層部から空気塊(くうきかい:空気の集まり)が侵入する現象が生じ、対流が活発になることも知られている。
しかし、対流ジャンプ発生時に中高緯度から流入する空気塊の影響に関してはまだ十分に議論されていない。
そこで今回、筑波大学生命環境系の植田 宏昭 教授や同大理工情報生命学術院の中西 亮太 氏らの研究グループは、過去48年間の大気データから対流ジャンプ現象の発生が確認された20の事例を抽出し解析を行った。
その結果、①対流ジャンプ発生時には日本の東海上で偏西風が大きく蛇行している、②対流ジャンプ発生領域付近の対流圏の上層に中高緯度からの持続的で大規模な空気塊の流入が見られる、③流入した空気塊は、中緯度の対流圏上層に存在する大規模な気圧の谷から切り離されて生じたものと見られる、④空気塊の流入は、上昇流を強化するように働いている、ことが分かったという。
研究グループは「対流ジャンプが、亜熱帯の高い水温に起因する大気と海洋の結合作用の効果に加え、対流圏上層の高渦位空気塊が中高緯度から亜熱帯へ侵入することによる力学的な効果を受けて発生することを(解析結果は)示している」と話している。