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クェーサーからの大量な分子ガスの強烈な噴き出しを観測―宇宙初期の銀河成長を抑制するメカニズム捉える:北海道大学/筑波大学ほか

(2024年2月2日発表)

 北海道大学、筑波大学、早稲田大学の共同研究チームは2月2日、129億光年かなたの銀河で明るく輝くクェーサーからの強力な分子ガスのアウトフロー(噴き出し)を観測することに成功、分子ガスのアウトフローで星形成が抑制されている証拠を世界で初めて捉えたと発表した。

 宇宙を形成している銀河には、星を活発に作っている銀河もあれば、星の形成が不活発な銀河や、星の形成を終えた銀河がある。星形成の不活発化は過去の活発な時期を経て、何らかの原因で星形成が抑制されたことによると考えられているが、その原因として考えられているものの一つが、銀河からのガス噴き出しのアウトフロー。

 銀河中心にある超巨大ブラックホールへと物質が降り積もることで明るく輝く天体はクェーサーと呼ばれているが、宇宙初期のクェーサーは星形成が活発で、強烈な分子ガスのアウトフローを生み出している可能性が指摘されている。

 そこで研究チームは、129億光年かなたのクェーサーJ2054-0005を、南米チリの標高5,000mの砂漠にあるアルマ望遠鏡を用い、特定の分子の吸収線を活用して観測した。

 その結果、星の材料となる分子ガスが銀河の外へ激しく噴き出しているアウトフローを捉えることに成功、噴き出している速度は毎秒700km,最大で毎秒1,500kmにも達することが明らかになった。

 流出している分子ガスは1年間あたり太陽質量の1,500倍に相当する莫大なもので、J2054-0005が年間あたりに新しく作る星の質量の2倍に当たる。このため、今後およそ1,000万年という短い期間で星の材料となる分子ガスが枯渇していくと予想されるという。

 今回の観測で得られた成果は、分子ガスのアウトフローが銀河の星形成を抑制するという理論予想を裏付ける重要な発見としている。