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ブドウの難病発生のメカニズムを解明―世界が困っている大病克服に一歩:岡山大学/農業・食品産業技術総合研究機構ほか

(2024年1月15日発表)

 岡山大学、(国)農業・食品産業技術総合研究機構などの共同研究グループは1月15日、ブドウの樹の重要病害発生のメカニズムを解明したと発表した。この難病は「根頭がんしゅ病(こんとうがんしゅびょう)」と呼ばれ、世界中のブドウ園、中でもワイン用の圃場(ほじょう)で多発しカナダや米国で大きな問題になっていて日本でも被害が増えているが、化学農薬での防除が難しく、まだ有効な防除技術がない状況にある。こうした中で、先に岡山県農林水産総合センターが見つけたこの難病に対し抗菌効果を持つ「拮抗細菌(きっこうさいきん)」が注目されているが、その作用メカニズムを解明することに成功した。生物農薬開発への応用が期待される。

 ブドウは、バナナ、リンゴに次ぐ生産量世界3位の果実だが、栽培の泣きどころになっているのが「根頭がんしゅ病」の発生。ブドウの樹にコブができる土壌病害で、土壌の中で棲息している「アグロバクテリウム」という病原細菌がブドウの根から樹内に入って各所の細胞に病原性の遺伝子群を送り込み、ゲノムにまで侵入していって異常増殖(がん化)を起こして樹を枯死(こし)させてしまう。

 まさに、ブドウの“がん化”現象で、化学農薬による防除が難しい病害になっている。

 こうしたことから救世策になるのではと着目されているのが病原細菌に対し抗菌効果を持つ拮抗微生物(生物農薬)の開発で、岡山県農林水産総合センターが複数種の拮抗細菌を見つけている。しかし、作用メカニズムは解明されておらず。不明だった。

 今回の共同研究には、(国)理化学研究所、九州大学、岡山県、が参加、「テイロシン」と呼ばれる複数のたんぱく質でできた粒子の働きにより病原細菌が死滅する溶菌(細胞の細胞壁を溶かして死滅させること)が起こり、テイロシンによって抗菌作用が生じていることを突き止めた。テイロシンが抗菌効果の実体であることを実験によって示したのはこれが初めて。

 生物農薬は、病原微生物にだけダメージを与える微生物を用いて病気の発生を抑えるだけに環境にやさしく、バラ、キク、リンゴなどでは既に根頭がんしゅ病に有効な生物農薬が実現している。

 テイロシンは、特定の細菌に限定的に作用するたんぱく質なだけに、今回その作用の実体が分かったことで「根頭がんしゅ病」に強いブドウ開発への利用研究が進むものと見られる。

 この研究成果は、1月18日に、国際微生物生態学会の科学雑誌「The ISME Journal」にオンライン掲載された。