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さい帯血移植による白血病治療―成績向上へ条件解明:筑波大学

(2024年1月15日発表)

 筑波大学は1月15日、血液のがんである急性骨髄性白血病の治療に広く行われているさい帯血移植では特定の抗がん剤と低線量の全身放射線照射の併用が移植手術後の生存率を最も高められることが分かったと発表した。今後のさい帯血移植による白血病の治療成績の向上が期待できるとしている。

 さい帯血移植は、出産後に廃棄される胎盤やへその緒に含まれる血液から造血幹細胞を取り出して患者に移植するもので、白血病の治療に広く用いられている。筑波大学の千葉 滋 教授、栗田 尚樹 講師らは今回、この移植の前に治療効果を高めるために投与する抗がん剤と放射線治療の最適な組み合わせを突き止めた。

 今回の研究では、日本で実施された造血幹細胞移植のデータが一元管理された「造血幹細胞移植レジストリ」に記録されていた1,359症例のデータを詳しく分析した。その結果、抗がん剤のフルダラビンとメルファランを用い、さらに低用量の全身放射線照射を組み合わせると、さい帯血移植後の白血病再発や合併症による死亡が最も少なくなることを突き止めた。感染症による死亡も少ないことが分かった。

 一般的にさい帯血移植は合併症による死亡が多く、骨髄移植や末梢血幹細胞移植と比較すると移植成績が劣るとされている。これに対し、筑波大は「最適な移植前処置を用いることでこれを克服できるかどうか、移植レジストリのデータを用いてさらに解明していく」と話している。