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牛乳アレルギーの治療効果―特定腸内細菌が関与:理化学研究所

(2023年11月1日発表)

 (国)理化学研究所は11月1日、牛乳アレルギーの子どもの治療法として知られる経口免疫療法は、便に特定の細菌群が多く含まれている子どもほど高い効果を示す傾向があると発表した。アレルギーの原因となる牛乳を少しずつ与えることでアレルギー反応を減らしていく経口免疫療法の治療効果を、より高めるための併用療法の開発に役立つと期待している。

 牛乳アレルギーの多くは3~5歳までに自然に治る可能性がある。ただ、治らない場合には重いアレルギー反応を起こす可能性もあるため、牛乳の摂取は避けなければならないとされている。

 理研は今回、牛乳アレルギーを持つ5~15歳のこども32人を対象に経口免疫療法とその治療効果、腸内環境との関係について詳しく調べた。このうち4人は重い副作用などがあったため治療を中止したが、残る28人が13カ月にわたって治療を続けた。その結果、全員がアレルギーの指標となる数値は改善したが、治療終了後も継続的に牛乳にアレルギー反応を示さなかったのは7人だけだった。

 治療中と治療後に子ども達の腸内細菌とその代謝産物を詳しく調べたところ、バクテロイデス科と呼ばれる細菌を中心にした細菌群と脂肪酸を中心とした代謝産物が大きく変化していた。また、アトピー性皮膚炎や喘息(ぜんそく)の治療を受けている場合などは治療効果が低かった一方、治療開始前にビフィドバクテリウム科を中心とした腸内細菌群が豊富だった子どもほど治療効果が高かったことなども明らかになった。

 これらの結果について、理研は「経口免疫療法が免疫寛容を誘導するメカニズムの解明や、経口免疫療法における腸内細菌をターゲットとした併用療法の開発に貢献する」と期待している。