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非がん患者にも緩和ケアを―専門病棟の6割が希望:筑波大学

(2023年2月6日発表)

 筑波大学は2月6日、末期がん患者の痛みや精神的苦痛を和らげる緩和ケアを実施する医療機関の約6割が国の医療保険による入院費補助があれば心不全や呼吸不全など他の病気で苦しむ患者も受け入れるとの調査結果を発表した。緩和ケア病棟を持ち、日本ホスピス緩和ケア協会に加盟する381の医療施設を対象に実施したアンケート調査で明らかになった。

 アンケート調査は筑波大学医学医療系の濱野淳講師らが2022年1月に実施、調査表を送った381施設のうち264施設から回答を得た。その結果、回答を寄せた施設は平均して21.2±7.9床の緩和ケア病床を持っており、2020年度には15.2%の施設ががん以外の患者を緩和ケア病棟に受け入れていたことが分かった。

 緩和ケア病棟へのがん以外の患者を受け入れについては、75%の施設ががん患者と同等の入院費用が医療保険で給付されることが「非常に必要」「必要」と答えた。また、がん患者と同等の入院費用が給付されれば、非がん患者を緩和ケア病棟に受け入れることを「希望する」「やや希望する」と回答した施設は59.1%あった。

 さらに、非がん患者を受け入れる意向を示した施設は、①各疾患についての入院基準の明確化、②非がん疾患の緩和ケアに関する教育・研修システムの確立、③病院内の専門家による支援体制、が必要と考えていることが明らかになった。

 これらの結果について、濱野講師は「日本における非がん患者に対する専門的緩和ケアの現状が明らかになった」として、多くの非がん患者が専門的緩和ケアを受けられるよう体制整備が進むことを期待している。